「六月の蛇」

黒沢あすかがいい!


  

月に一度あった東京出張が四月からなくなり、ちびっと淋しい思いをしていた。今回は昨年もお邪魔した「福岡アジア映画祭」に行くため土日で福岡へ行ってきました。
でも、天神に行く前に博多駅で途中下車。シネ・リーブル博多駅で日本映画「六月の蛇」のモーニングショーを観る。予告編を観る限り、そのモノクロの画面から伝わってくるのは、エロチックで(日本語風に)猟奇的なイメージだった。一時間ちょっとほどのそう長くない作品だけど、中身はなかなか詰まっていて、観ていて楽しかった。そう、予告編どおり、エロチックで猟奇的なのだ...。

ストーリーはメッセージ色が濃いわけでもなく、日常のほんの些細な出来事から、非日常の世界へ入り込んでしまうその様子が描かれている。入り込んだ非日常の世界によって、果たしてその結果が昇華したのかどうかはボクにはわからなかったけどね。
ただわかったのは「こんな世界もあるんだなぁ」って程度の当たり前のことだけ。誰もがその仮面の下に同じような部分を持っているのかもしれない。その程度の差はあるだろうけれど...。

電話で人生相談を受ける。その結果自殺を思い止まった人もいれば、人生に光明を見出した人もいる。辰巳りん子はそんな電話相談窓口のカウンセラー。ある日、彼女のもとに一通の封書が送られてくる。この封筒が非日常の世界への入り口だった。
りん子、その夫シゲヒコ、そして封筒の送り主であるカメラマン。この三人を巻き込んで、日常の下、非日常の世界が繰り広げられていく...。まぁ、非日常と言っても、そんなに大したことない(?)んだけどね。

ちょっとわかりにくかったのは、りん子が本当に写真を返してもらいたいと思っていたのかどうか。その辺が曖昧なままだった。カメラマンが「返して欲しかったら...」って切り出すまで、彼女からはただの一度も「写真を返して!」とは言っていない。
ある意味、きっかけからして、りん子は自ら戸口を開き、非日常の世界へ飛び込んで行ったのかもしれない。
同じミニスカートをはいて歩く姿。それが最初と二度目ではまるで違い、彼女を追いかけるデパートの人々の視線があからさまに変化する様はおかしいほどだ。

この作品に対する評価は観る人によってさまざまだと思う。全ての人が面白く、興味深く観ることが出来たとは思えない。そうではない人もいるだろう(でも、きっとそんな人は最初から映画館には足を運ばないか)。
ボクは、この映画の内容がどうのこうのと言うことよりも、りん子を演じる黒沢あすかという女優さんに出会えたことが、素直に嬉しい。彼女は今後も要・注目です!

モーニングショーで朝っぱらから観る作品ではなかったような気がします。福岡の方もそう思っていたのか、10名もいない淋しい入り。
今回は入り口に向かって左手にあるスクリーンで拝見しましたが、入れ物に対してスクリーンがかなり小さい印象を受けました。この作品がスタンダードサイズであったことを考慮しても、あれって感じ。
また、この映画館、最近ではとんとお目に(お鼻に?)かからなくなった、湿っぽくて甘酸っぱい、そしてすこし怪しげな懐かしい匂いが漂っていました(う〜ん、大毎地下を思い出す!)。

おしまい。