「ペパーミント・キャンディ」

どうして俺は...、


  

まだそんなに韓国映画を観ていない頃、たまたま巡り会ったのがこの「ペパーミント・キャンディ」。
それまでに観ていた韓国映画は、甘い甘い(でも、大好き!)「八月のクリスマス」やアクション大作(でも、今もう一度観たらきっと大したことないと思う)「シュリ」と他に少し。
そして、この「ペパ・キャン」には凄い衝撃を受けた。「韓国にもこんな映画があるんだ」と。この作品をきっかけに、ボクはK-movieに傾注していったと言っても過言ではない。

イチャンドン監督(今はT大臣U)、主演はソルギョング。
そして、韓国の現代史を溯りながら俯瞰する独特の切り口。なんとも素晴らしい作品だ。

今回の上映はサブタイトルが付いていて「祝イ・チャンドン文化観光部長官就任記念」だそうだ。凄いなぁ。この監督、他にはハンソキュウの「グリーンフィッシュ」、ソルギョングの「オアシス」(日本未公開)を撮っています。

さて、ほぼ三年ぶりに観るこの映画。相変わらずの出来映えだけど、今回はストーリーを知っているだけにじっくり観ることが出来た。
それにしても悲しいストーリー。
キムヨンホは数度の挫折と絶頂を繰り返し、そして今はどん底にいる。今の彼のどん底は、社会的に金銭的に打ちのめされているだけではなく、心情的にも最低な場所に置かれているのだ。
「どうして俺は、素直にユンスニムの思いを受け入れなかったのか?」
その結果がこのザマだ。そして、彼女も幸せになれなかった。あの時、何故か魔が差して彼女を邪険に扱った。純真な思いを踏みにじった。そのツケを払わされている。何回かやり直すチャンスもあったのに...。

この映画を観ながら考える。スケールの違いこそあれ、ボクもキムヨンホと同じようなことを経験して来たのではないか。それは何も女性関係のことではない。人生に於いて、何度かのチャンスを、或いは重大な選択をする際に、妙な意地を張り、自分の本当の心を騙して来たのではないか?

それにしても、完成度が高い作品。
ソルギョングの素晴らしい演技だけではなく、良く練られた脚本には舌を巻く。様々なターニングポイントに、キムヨンホは様々な職業で登場してはその渦中に投げ込まれ、もがき苦しむ。そして彼のそばにはいつも女の姿がある。 凄い勢いで近代化を突き進み、経済成長を成し遂げた韓国のその時々の姿がこの映画の中にはある。
本当は、ボクとかキムヨンホに近い年齢層のおじさん連中にこそ是非観て貰いたい作品です。

「バッド・ガイ/悪い男」と並んでオススメの作品。九条のシネ・ヌーヴォで6/18までモーニングショウで上映中。お時間が許せば是非ご覧ください。今回観逃しても、いずれまた上映されることがあると思います。

おしまい。