「風の絨毯」

さくらちゃんがかわいい


  

今年の梅雨はなかなか強烈。どしどし雨が降る。それも風を伴なって大粒の雨。お陰で体調がイマイチ良くない。全身がじめっとして、気持ち悪い汗をかく。何か悪い病気なんだろうか(てなわけないか)。
今回は珍しく、公開初日の初回を拝見する。どうしても避けられない事態で、土曜なのに朝から仕事。お昼までにそれを片付け、12:15からの初回に間に合わせた。ガーデンシネマのロビーには上映を待つ人がそこそこいて、なんだかちょっと嬉しかった。

この映画を語る上で欠かせないポイントが三つがある。
まず、主演のさくらちゃんのお父さん・まこと(榎木孝明)。この人は明らかにミスキャスト。この方役者さんなのか、それとも素人さんなのか。まったくセリフの棒読みには参った。このおとっつぁんのお蔭で、随分いい加減な映画に見えてしまう。惜しいなぁを通り越している。残念ながらこれが最初の一点目。
次に、さくらちゃん(柳生美結)。この子とスクリーンで会うのはきっと初めてだと思うけど、なかなかかわいい。確かに演技は最後まで固くて、上手だとは言えない。でも、イラクに着いた当初の能面のような無表情の顔つきと、絨毯に毛糸を織り込むときに見せる顔は全然別のものだった。今後に期待。
そして三つ目、絨毯がどのようにして織られていくのか、それをつぶさに知ることが出来た。そうか、あんな風にして複雑な模様を編んでいくのか。知らなかった。決して多くの工程があるわけではなく、少ない工程でもそのほとんどが、気が遠くなるような単純作業の繰り返しなのだとわかった。決して誇張ではなく、絨毯はその工程に携わった多くの人の思いが込められているんだなぁ。

物語りそのものは、まるで取って付けたような付属品。特に冒頭の日本でのシーンはそうだ。
でも、絨毯が織り始められてから、俄然面白くなる。そこへ、さくらと現地の少年の淡い交流があり、さくらと父親との邂逅があり、現地コーディネーター(エージェント?)アクバルの夫婦間の心の動きがある。でも、これらのエピソードはほんの脇役にしか過ぎない。本当は、この絨毯が出来るまでにもっと絞り込んだ方が良かったのかもしれない。
現地で実際にこの絨毯を織ってくれた人は、日本人が困っているから織ったのか、それとも急ぎの仕事だから仕方無しで休みもせず、寝る間も惜しんで織ったのか、その辺が全く説明されていないのがもったいない。
それでも、絨毯にはいろんな意味でドラマが詰まっている。興味深かった。それに引き替え他のエピソードはちょっと弱いな、使い方が下手なのかもしれないけれどね。

最後に、今まで観たイランの映画はリアリティを追い求めるがためにか(海外からの視線を意識していないからか?)、イランの観光案内的な部分はほとんどなかった。でも、今回のこの映画では、さくらちゃんが少年の馬車で数カ所市内の観光地(?)を巡る。その姿を見て、イランに行きたいなと思った。ボクにとってイランはまだまだ未知の国なのだ。

どっちかと言うと「感動」からはほど遠い作品ですが、お時間があればご覧下さい。もうしばらく新梅田シティの梅田ガーデンシネマで上映しています。
しかし、さくらと言えば、反射的に倍賞千恵子のさくらを連想してしまうボクはおっさんなのかなぁ。

おしまい。