「スリーピング・ディクショナリー」

古くて新しいのは男女の仲かね


  

ボクにもこんなローカル・ルールを適用してくれたらイイのになぁ。思わずそんなことを考えてしまうストーリー。
1920年代。現在のインドネシアのが英国の植民地だった時代。その地を治めるイギリスの行政官が新しく赴任してくる。新しい行政官は現地の言葉を覚えるために、選ばれた住民の娘と寝室を共にする習慣があった。その娘を「スリーピング・ディクショナリー」と呼ぶ。
今回、赴任してきたジョン(ヒュー・ダンシー)は、その潔癖な性格から、上司の行政官から推薦された娘を拒む。しかし、それはそれで、選ばれた娘の立つ瀬がない。さらに、あの男はゲイではないかという憶測まで流れる。住民感情を鑑み、彼はセリマ(ジェシカ・アルバ)を受け入れることにする。

この映画の凄いところは、イギリスに支配される原住民をまるで「土人」かのように描写しているところ。最近ではまず見かけることがなくなった描き方。うーん、これって却って新鮮だ。

セリマを受け入れたジョンは、どんどんセリマに傾注していき、上司の心配をよそにとうとう彼女と結婚すると宣言する始末。しかし、将来を嘱望されるエリートにそんなことが許されるはずがない。しかも、上司は自分の娘の結婚相手にしようと彼を狙っていたのだ。
深い情を交わす二人に立ちはだかる大きな壁。この二人の愛はジョンの帰国という形でむりやり幕を閉じさせられてしまう...。

ここでお話しを終わっておけば、まだまだ傷が浅かったのに、ここからが本編のようなもんだから、なんとまぁ、長い蛇足だ。

ジョンは、恋に関しては全くの優柔不断な男だ。これはもう、男の風上にも置けないような奴。彼が誰を好きになろうと、愛そうと、結婚しようが、それは全くの自由だ。でも、またしても、この東洋の果てにある島へ舞い戻ってくることはないだろう。
これはもう、10年経っても小学生時代の初恋相手が忘れられないのと同じだ(いや、もっと始末が悪い?)。自分で不幸のタネを蒔き、育てて刈り取っている。その不幸を自分だけでかぶるならともかく、たくさんの人を巻き添えにしてしまうのは「いかがなものか」。
ボク自身はジョンに全く興味も覚えなければ、同情も出来ない。そりゃあんた、ロンドンで結婚するのが悪いよ!

一方、セリマはいいなぁ。エキゾチックな整った顔立ちに、抜群のスタイル。彼女がスリーピング・ディクショナリーなら、上達もさぞかし速いことでしょう。いいなぁ。うん。ジェシカ・アルバは決して芝居が達者だとは思わないけれど、花がある女優さんですね。

しかし、結婚とか、夫婦関係というのは、愛情だけではなく、打算とか意地の張り合いで成り立って行くものかもしれないですね。なんか、しみじみとそんなことを考えさせられる作品でもありました。
舞台が少し奇異なだけで、ストーリーそのものは決して目新しくない。古くて新しい、男女の仲を描いたものです。

「興味があれば...」と書きたいところですが、6/27(金)で上映は終了してしまいます。会場は動物園前シネフェスタ4。20:50からのレイトショーのみでの上映。
この日はお客さんは20名弱ほど。予想以上の多さに、ちょっと怯んでしまいました。

おしまい。