「北京ヴァイオリン」 |
北京には現実があるのか |
この日は試写会。
「キリング・ミー・ソフトリー」でがっかりさせたチェンカイコー監督が中国で撮った新作。物語りとしてはどうも腑に落ちない部分もあるけれど、映像と音楽は美しく、観る者の心は揺さぶられる(涙腺が弱い人は要注意!)。 ここでストーリーについて細かく語るのはやめよう。
父リウを演じるのはリウペイチー。「秋菊物語」で金玉を蹴られる気が弱いコンリーの旦那、「西洋鏡」では中井貴一に似た写真館の老板。ここでは、スマートさはまるでない垢抜けない無精ひげを蓄えた田舎のオヤジを好演。毛糸の帽子、つばが異様にでかい野球帽が似合って(?)る。ボクはこの三役を同一人物が演じているとは信じられなかった。
一見実力だけの世界のように見えながら、自分の才能と努力だけではどうしようもない音楽の世界。そこを天賦の才と愛情だけで渡りきろうとする父子。つねに二人の前に立ちはだかるのはお金。事あるごとにお金が大切な意味を持つ。 映像がとても綺麗。少年が駆け抜ける長く壁が続く路地裏、駆け上がる階段、運河を渡る橋。奇抜な角度からのショット。どれも素晴らしく、中国へ行きたくなる(特に蘇州へ)。一転して北京の街並みは美しさを強調してはいない、二人が借りる部屋もチアン先生の住まいも、どれも標準から見れば充分綺麗になっているけれど都会が持つ厳しさを表現するのには充分なリアリティさを持っている。故郷が夢だとすれば、北京は現実なのか。
物語りは大円団では終わらない。これからこの親子はどうなるのか? 今週末(6/14・土)から、梅田では新梅田シティの梅田ガーデンシネマで公開されます。お時間があればどうぞお楽しみください! おしまい。 |