「ダブル・ビジョン」

もう一度観たい、テンコ盛りのごった煮


  

もう梅雨入り。季節の上ではほんとうにイヤな季節だけど、この梅雨入り直前はなかなかいい。昼間はどれだけ暑くてもなんとか我慢はできる、そしてこの時期は朝夕にしっかり涼しくなってくれるのが嬉しい。家に帰り着くころには一息つけて、夜も暑さにうなされることなくぐっすり眠れるのが助かる。でも、これから一月もしないうちに、夜もクーラーのお世話になるんだろうなぁ...。

今回拝見してきたのは「ダブル・ビジョン」台湾の映画ですね。でも、セリフは広東語(きっとこの作品普通話バージョンと広東語バージョンがあったのだと思う)。
舞台は台北市警。ここの国際課のホアン・フォトゥ刑事(トニーレオンカーファイ)が一応の主人公。
この映画、一見するとスリラーと刑事モノのような印象を受けがちだが、実は一つの映画の中にありとあらゆる要素がぶち込まれた「テンコ盛り」状態の作品。結局何の映画だったのかよくわからない。しかし、インパクトだけは強烈。

ボクとしては、タイトルにもなっている「雙瞳」(一つの目玉に二つの瞳がある)をもうちょっと深く掘り下げて欲しかったなぁ。この「雙瞳」ってなかなか気味が悪いと言うか、迫力があると言うか...。もし、こんな眼をお持ちの方とお会いしたら腰が抜けてしまうのではないでしょうか?

台北で不可解な殺人事件が連続して発生する。真夏のオフィスでの凍死、火のないマンションの一室での焼死、そしてアメリカ人の牧師がベッドで内臓を引き抜かれて殺されていた。
これらの事件に共通しているものは何か? 謎が謎を呼ぶ。
そして台湾警察は米国にFBIのベテラン捜査官の派遣を依頼する。台北にやって来たのはリクター(デイビット・モース)。署内でも英語が堪能なフォトォが通訳も兼ねて彼とコンビを組むことになる...。
しかし、こんな気味が悪い「猟奇的」な事件、ほんまに解決するのか?

牧師の腹に残されていた呪文(?)を糸口に事件はおぼろげながら解決へ向かっていく(さすが、映画だ!)。
事件の行方に光明が差し込んで来たとたんに、何故か映画は急速に事件から離れて行き、焦点がフォトォの個人生活へ移っていく。彼の結婚生活は過去のある事件がきっかけになって、ほとんど破綻していた。この家庭が再び絆を取り戻すか否かに主題はすりかわっていたのだ。
この強引さは観ていて「あれれ?」となってしまう。
この事件、実はレオンカーファイが自分を取り戻すためのきっかけに過ぎなかったのか?

まぁ、それはいい。とにかくこの映画、一回観ただけではとてもじゃないけど理解出来そうにない。難しいのではなく、あまりにもたくさんの要素が詰め込まれ、それがテンポ良く展開して行き、観客はそのテンポに付いて行けない。頭の中では「?」が点滅しながらも、ストーリーを追うのに忙しく多くの「?」を置き去りにしてしまうからだ。

はぁ、ラストもいったい...。

動物園前のシネフェスタ4ではもうしばらく上映しているようです。お時間があればこの複雑怪奇な作品を一度ご鑑賞ください。

おしまい。