「中毒/Addicted」

これは愛なのか...?


  

今まで知らなかったけど、心斎橋にある韓国の大阪領事館で月に一回映画の上映会をしているらしい。調査の結果、関西韓国文化院という施設があり、確かに映画の上映をしているようだ。5月の出し物は「中毒」。さっそく、拝見してきました。
会議室のような場所に50脚ほどのパイプ椅子が並べられ、その前にプロジェクターと大きなスクリーンが設置されている。どうやらフィルムを使った上映ではなく、ビデオのようだ(ちょっとがっかり、でも無料だからね、仕方ないか)。字幕無しのハングルオンリー。ビデオなので画面の比率の関係で左右が切れてしまい、場合によってはトリミングされています(でもそれは気になる箇所がほんの少しある程度で、充分許容範囲内)。

この作品「中毒」は、今後、7月の福岡アジア映画祭やシネマコリア2003でも上映が予定されているので、最初に警告していおきます!
もし、日本語字幕付きでご覧になる予定がある方は、あまり予備知識持たないで観た方が面白いと思います(だから、これ以降は映画を観終わってからお読みください)。そして、もし、ハングルにさほど自信が無い方が日本語字幕無しでご覧になるのなら、いろいろ予習してからこの作品を観ることをオススメします!
(もちろん、ボクは後者なので、もう少しどんなストーリーなのか知っおいてから観れば良かった!)

それほど、奇抜なストーリー。この意外性に富んだストーリーには正直驚かされました。観賞後は珍しく心がザラッとした気分になった。
しかし、イビョンホンはいいとして、ヒロインがイミヨンなのには驚いた。どうもイミヨンとは相性が良くないんだよなぁ。

ウンス(イミヨン)はステージ演出を請負う会社に勤めている。郊外にある一軒家の我が家に帰れば、結婚してまだそんなに間が無い旦那さん(イオル)とその弟(イビョンホン)と三人で幸せそうに暮らしている。この三人がいわば主人公。
ホジン(旦那さん)とウンスのアツアツぶりがなんとも眩しい。そんな仲を見せつけられても、弟・テジンは笑っているだけ。兄は自宅の倉庫を改造した工房で木製の家具を作っている。弟はそれが仕事なのかはよくわからなかったけど、カーレースのドライバーをしている。そんな仲の良い三人に突然の悲劇が襲う...。

その日はテジンのレース当日。兄はそのレースを見るためにタクシーでサーキットに向かっていた。家を出るのが遅くなり、タクシーには急いでくれと指示を出していた。タクシーが交差点に入ったその時、別の方向からダンプが走ってきてタクシーを跳ね飛ばし、交差点にある電話ボックスに激しくぶつかる。
時を同じくして、弟はレースがスタート。何周目かにトラブルが発生しているのに気が付かずコース上に停まっているクルマに猛スピードのまま乗り上げてしまう。
仲が良かった兄弟は、同じ時刻に別の場所で事故に遭遇し、瀕死の重傷を負う。そして同じ病院に運び込まれる。二人とも回復の見込みは無い。意識が戻らないまま、ただベッドの上に横たわっているだけ...。
そして、一年が経過。あれほど幸せに満ちていた郊外の家は、雑草が生い茂り廃墟とは言わないが淋しさが溢れている。と、奇跡的にテジンだけが意識を取り戻す。
長い眠りから目覚めた弟・テジン。姿かたちはテジンそのままだけど心は兄・ホジンに入れ替わっていたのだ。
でもどう見てもテジン。ウンスや周囲は心が入れ替わったことに違和感を覚え、テジンの姿をしたホジンを受け入れることができない。テジンの恋人が駆けつけるが、もちろんテジンは彼女を受け入れることが出来ない。
家に戻ったウンスとテジンは奇妙な生活をスタートさせる。ウンスは彼との暮らしが始まってから、様々な奇妙な現象を目の当たりにする。そして自分の近くにホジンの存在を感じ始めてしまう。
ある出来事がきっかけになって、ウンスは本当に弟テジンの肉体にホジンの心が宿ったのだと確信し、彼を受け入れる決心をする。
顔や姿が変わってしまっても、心が同じなら愛は貫けるのか?

ちょっとした「記憶ゲーム」のような作りになっているせいか、映画は前半からとても丁寧に作られている。細かな事実の積み重ねが疎かにされていないのに好感が持てます。また、劇中に雨がとても上手に使われているのもいいですね。ストーリーもテンポ良く展開して、観ていてあきが来ない。
なのにイマイチこの映画に乗り切れないのは、このストーリーの特異性に依るところが大きい。ボクにはちょっと付いていけないな。
さらに、イミヨンの演技が気に障る。この人の顔は能面のような「固さ」を感じさせ、あまり表情で感情が伝わって来ない。主役の三人の中でこのイミヨンが一番大事な役だけに「それはないやろう」と思ってしまう。字幕が無い場合、演技する役者の表情はとっても大切な意味を持っている。だから余計に彼女の固い能面が気になった。

まぁ、そんなことを差し引いても、なかなか見所の多い作品だと思います。まずまずのオススメ。是非、フルスクリーンの日本語字幕付きでもう一度観てみたいと思います。
それにしても、イビョンホンを観ていると、今メッツで活躍している新庄選手に見えて仕方ないんだなぁ。

しかし、韓国の映画の中では主役クラスは実に夢のような家に住んでいる。冒頭近くに、急な雨が降りホジンが傘を持ってウンスを最寄の地下鉄の駅まで迎えに行くシーンがある。駅まで歩いて行ける距離で、なおかつ郊外にあるような広々とした一戸建ての家は凄いよ。これはある意味、ソウルに住む庶民の漠然とした憧れを具体化したものなんでしょうね。

次回の上映作品は「我が心のオルガン」。またイビョンホとイミヨンが出演している他、憧れのチョンドヨンが17才の小学生(!)を演じています。楽しみ!

おしまい。