「サイドウォーク・オブ・ニューヨーク」

恋する街?


  

岸和田へ行くことはそう珍しいことではなく、年に一度9月には必ずお邪魔する。しかし、こうして、カンカンに映画を観に行くなんて思ってなかった。
「地車・だんぢり」が走っていない商店街はガランと淋しく、なんだか不思議な空間だった。

さて、この岸和田のカンカンにあるユナイテッド・シネマ岸和田で拝見したのは「サイドウォーク・オブ・ニューヨーク」。なんと関西ではここだけでの上映。梅田がベストだけど、それが無理でもせめて大阪市内で上映して欲しかったなぁ。
しかも、この日の上映回数はたったの一回。お客さんはボクを含めて6人の閑人たちだ。

幾つものサイドストーリーが絡まりあって、一つの物語を織り成していく(はずだったんだろうけど、それが成功しているとは言い難い)。
インタビューとそこから出てきた事実の再現ドラマ風。ところが、そのどれもが何とも嘘臭い上に踏み込みが浅い。訴えかけるテーマも弱くて、これじゃぁ「男はつねに若くて新しい女性を求めています」って感じ。
この作品、ちゃんと考えて作られたのか? それとも香港式(?)に行き当たりばったりで作ってしまったのか? 正直言って良くわからない作品だった。
別にオムニバスでもいい。でも、オムニバスにするなら各ストーリーが明確なテーマの元で作られているか、一見別の話しのように展開していながら最後に全てがピタッと収まってくれないと、観ているこちら側は消化不良を起こしてしまう。

テレビ局でディレクターを務める男、ある日同棲中の彼女に部屋から追い出される...。ここからこの話しは6人の男女(各3人)がニューヨークの街で恋を求めて彷徨い歩く様子を映しだす。
まずは男性陣をご紹介。テレビ局のディレクターは小学校の教師と不動産業の営業ウーマンに出会う。プロのバンドマンを目指すホテルのドアボーイは教師との結婚に破れコーヒーショップのアルバイトの女子学生と運命の出会い(?)をする。そして、中年の歯科医は不動産の仕事をしていてる二度目の妻がいるにも関わらず公園で話し掛けた女子大生とは週に1時間の愛人契約を結んでいる。
次いで女性陣。小学校の教師はいつまでも定職に就かず浮気を繰り返す夫と離婚しビデオ屋でテレビ局のディレクターと出会う。歯科医の夫人で自らも仕事をこなす女性は最近夫の浮気が気になっている、そんな時部屋を探しているディレクター氏に会う。田舎からニューヨークの大学へ進学してきた彼女は公園のベンチで勉強をしていたら中年のオヤジに話し掛けられ、それ以来の愛人関係だ。最近バイト先のコーヒースタンドに来るようになったホテルのドアマンから盛んにモーションをかけられている。

男と女が交互に並んで、各人を頂点とする六角形を描いている。そして各々が隣り合う頂点に位置する異性に恋愛(或いは擬似恋愛?)感情を持っている。なおかつ、片方には現在(場合によっては過去?)の恋人が、もう片方にはこれからの恋人(?)がいる構成(ディレクター氏のみ例外)。
そんな複雑な人間関係を形成し、常に新しい恋が芽生える街こそニューヨークなのか?

どうしてこの映画があまり面白くないのか、ちょっと考えてみた。
まず、一つ目はどの人にも魅力が感じられない。この6人誰もが自己中心でいわゆる「いい人」ではないのが辛い(一人ぐらい「いい人」がいてもいいのに)。
そして、二番目は明るさや楽しさが画面から微塵も感じられないのも大きい。
最後に、やっぱりお話しの練り方が少し足りないのではないでしょうか。お話しのプロットや着想は悪くないのになぁ。脚本が悪いな。まず、もう少し作り込む必要がある。そしてこの映画のコンセプトと言うか方向と言うか、観客に何を伝えたいのかをはっきりさせる必要があるんとちゃうかな。その辺が「惜しい」し、あまり面白くない大きな理由なのではないでしょうか。

テレビ局の男はこの作品の監督も務めるエドワード・バーンズ。歯科医の奥さんにして不動産屋の営業担当がヘザー・グラハム(彼女が奥さんなのによう浮気するなぁ!)。女子大生役にはブリタニー・マーフィー(頭は良くなさそうに見えたけど、なかなかかわいい!)。
お時間があればご覧下さい。わざわざ岸和田まで行く価値があったかどうかは...疑問。5/25まで上映しています。

おしまい。