「嫉妬は我が力」

主人公に魅力が無いのが致命的


  

続けて観たのは「嫉妬は我が力」という、言わば心理劇のようなシリアスな作品。今年のロッテルダム国際映画祭で大賞を受賞した作品。
正直に言うと、あまり魅力を感じられなかった。

ストーリーそのものはなかなか面白いと思ったんだけど、少し地味。
何よりも主人公の男(パクヘイル)にまるで魅力が無いのが致命的。また、この男が惚れる女性カメラマン(ペジョンオク)も年齢不詳だし、アピールが足りない。
どうしてこの男がこの女に熱を上げるのかが理解できなかった。この二人の配役を別のキャスティングにするだけで、この映画の印象はかなり違ってくると思う。特に女性を誰が見ても好感を持つような女優さんに替えるだけで、もっとわかりやすい作品になったのではないでしょうか。

編集プロダクションに勤める(アルバイト?)イウォンサン(パクヘイル)は、最近付き合っていた女性と別れた。いや、彼女から振られてしまった。でも、下宿の大家さんの娘は彼に思いを寄せている(彼にはこれっぽっちもその気はないだけど)。
振られたのは、編集プロダクションの社長がこの女性と出来てしまったからだ。でも、男は社長には何も言えず、ある意味、体よく使い走りをさせられている。
そして、男の前にもう一人の女性が現われる。カメラマンのパクソンヨン。何度かデート(?)をしているうちに、だらしない性格の彼女にどんどん惹かれて行く。そうこうしているうちに事件が起こる。
編プロのみんなと飲みに行った帰り道、泥酔した彼女を社長がタクシーに乗せ送って行ってしまう。そうして、ウォンサンはまたしても...。

とにかく、このイウォンサンが煮え切らないふにゃふにゃした性格(顔もだけど)。別にそれはそれでもいいんだけど、自分の彼女を取られて(しかも、二度も)、仕事を辞めたり、社長にねじ込むこともしなければ、彼女に掛け合うこともしない。ただうじうじと悩み、工事現場の砂を自分の顔に振り掛けるだけ。
この男を観て、可哀想だと同情する人は多くないだろう。同情できない男の物語りを観たいと思う人はやっぱり少ないだろう。観客はイウォンサンからは相当距離を置いてしまい、さも面白くなさそうにこの男の物語りの成り行きを傍観しているだけだ。
映画の良し悪しは、この観客と主人公の心理的な距離で決まってしまうのではないかな。一度遊離した距離はもう縮じまない。

下宿屋の娘との唐突で乱暴的なセックスシーンは、いかにも取って付けたような印象だし、最初の彼女が後姿だけで決して顔を出さないことに何か必然性があるのかも理解できなかった。
また、エンディングに見せる、何か全てを悟りきったような表情の社長の娘の表情もボクには意味不明のままだ。
結局、この一連の事態の結果、イウォンサンはどう変わったのか? いや、何も変わらなかった。明日からも同じ顔をして事務所のデスクに座っているんだろうな。

唯一の収穫は、編プロの社長役ムンソングンでしょうか。この人いいです。ちょっと大杉漣を彷彿させますね(メガネだけかな?)。
日本語の字幕付きで、再確認しながら観てみたい気もしますが、ちょっと望み薄かな。
それでも予想していたより多い50名ほどのお客さんが入っていました。

次回は最新の話題作。今回ソウルで観た中でも一番の作品「殺人の追憶」をご紹介します。ソンガンホは、やっぱりなかなかいいよ。

おしまい。