「WATARIDORI」

これ以上鳥たちの邪魔をしてはいけない!


  

ここ二週間、相次いで「死」を身近に感じることがあった。
悲しいことだけど、人はいつかは死んでしまう。肉体はなくなってしまうけれど、故人の想い出は残った人たちの記憶の中にしっかり刻み込まれている。いつまでも悲しんでばかりもいられないのも事実。生きている者は、悲しみながらも、お腹も空くし眠たくもなる。悲しみを乗り越えて生きていかなければならない。そして、ほんの少しでいい、たまにでもいいから、忘れずに記憶を思い出すことが、故人に対する一番の供養なんだろう(と思う)。

さて、久し振りに試写会に行かせていただく。
会場は京都だけど、ちょうど京都へ行く用事があったので好都合。この日は連休初日、しかも朝からこの上なくいい天気に恵まれたこともあり、交通情報によると名神は蝉丸トンネルを先頭に茨木付近まで大渋滞。よっぽどクルマで行くのをやめようかと思ったけれど、結局、豊能町から亀岡、桂経由で行くことにした。自宅から四条堀川までおよそ3時間強(帰りは空いていて1時間強でした)。
京都を中心に開催中の「世界水フォーラム」の開催にあわせてこの試写会も行われたようです。超満員かガラガラかどちらかだと思ったけれど、結局ほとんど空席がないほどのぴったしの入場者。いつもの試写会とは客層もちょっと違うような気がしました。

ここからは映画のお話し。
昨年秋の「大阪ヨーロッパ映画祭」で上映されたのに見逃してしまい悔しい思いをしていたし、最近この映画の予告編を観ることが多かったので期待していた。
淡々と渡り鳥(主に水鳥)の「わたり」を見せ続けてくれる作品。ナレーションも文字による説明も極端に抑えられていて、映し出される鳥たちの姿を通じて語りかけてくれる。
この鳥たちが「何を語ってくれる」のかは、観る人それぞれによって違うと思う。
壮大なスケールで繰り広げられる鳥たちの行動に驚くのか、細やかな彼らの愛情に心動かされるのか、「わたり」の謎に首を傾げるのか、それとも鳥たちを脅威にさらしているおろかな人間の活動に怒りを覚えるのか...。

特にこれと言ったストーリーは無く、次から次へと鳥たちが飛んでいき、生の営みを繰り広げる、それの繰り返し。退屈かと言うと、全くそんなことはない(場内では居眠りをしている人もいたけどね)。ただただ見とれてしまう。そして、鳥たちを応援したくなる。何も劇的なことは起こらない。でも、この作品の中には「生」が溢れている。

でも、正直言って興行的にはどうなんでしょう、この作品の素晴らしさと興行成績は必ずしも正比例はしないと思う。
抑制され尽くした演出、物足りなさを感じる方も大勢いらっしゃるでしょう。しかし、この映画の中には、あるがままの鳥たちの姿が映し出されているのだと思います。

自然やアウトドアに興味をお持ちの方にはおすすめします。
この映画を観た翌日からは、双眼鏡を片手にバードウォッチングすること間違いなしですよ!
美しい映像、そして想像を絶するカメラアングルに驚かれることは、間違いありません。
上手く、説明できなかったけど、ほんとは一人でも多くの方にご覧になっていただきたい作品です。難しい箇所はないので小学校の4年生以上ぐらいならお子さんでも大丈夫。
4月に入ってからテアトル梅田で公開される予定です(この映画に関してはご観覧終了後、プログラム購入をオススメしておきます)。

おしまい。