「上海アニメーション」

動く水墨画に目を奪われる


  

またまたやって来た九条のシネ・ヌーヴォで開催中の「中国映画の全貌2002-3」。
この日は「上海アニメーション」。「上海アニメーション」というタイトルの映画があるわけではなく、上海で作られたアニメーションの短編5作品を連続上映するプログラム。フィルムを使っての上映ではなくプロジェクターを使用した上映でした。
昨年観た「上海アニメーションの奇跡・Aプログラム」「同・Bプログラム」とだぶっている作品は無い。それでは各作品を簡単にご紹介しましょう(ただし、手元に資料が無いので間違っている可能性もあります、ご了承ください)。

『三人の和尚』
アニメというよりも動く線画のような作品。せりふは無く、表情としぐさだけですべてわかってしまうスグレもの。
ある丘の上にある寺院にひとりの和尚(というよりも小僧さん)がやってくる。仏像の前にある花がしおれているのを見て悲しみ、丘を駆け下って天秤棒をかついで桶二つに水を汲んで戻ってくる。花瓶に水を満たすと花は活きかえり、仏様も嬉しそうな温和な表情になる。そこへもう一人の和尚さんが丘を上ってきた、最初の和尚はこれで水汲みから解放されると喜んだのだが...。そしてそこへ三人目の和尚さんがやってくると事態はさらに複雑になり...。
この故事は前から知っていたのでとてもわかりやすく、かつ楽しく観ることができた。三人の和尚さんとと仏様の表情がいい。

『しぎと烏貝が相争う』
水墨画の技法を使ったアニメですね。シギの仕草がなんともリアルに表現されていて目を見張ってしまいます。これもセリフはありません。
ストーリーは「漁夫の利」。なんかそのまますぎて驚いてしまいます。純朴そうな漁夫の表情がいいですね。

『おたまじゃくしがお母さんを探す』
日本語の吹き替えが付いた作品。水墨画アニメの傑作だそうです。
なんか、NHK教育で放送されそうな小学低学年用の理科の教材ビデオを見ているような気がするストーリーですが、水墨画で描かれているカニやエビ、カメなどには驚かされます。おたまじゃくしたちの動きも妙にリアルで、その着眼点の素晴らしさに驚かされますね。
今回の上映作の中でも一番いい。

『火童』
がらっとタッチが変わった切り絵アニメ。これも日本語の吹き替え、ただし唄の部分だけ原音を使っています。
中国南部の少数民族に伝わる民話を題材にしたんだと思う。トーンが暗いのが気になるけど、凄く力強さとスケールの大きさをを感じる。

『鹿を救った少年』
素朴な印象を残す。セルアニメ。セリフではなく日本語のナレーションがかぶせてある。
深い山の中に住む心がきれいな少年と動物との交流を描く。この楽園に王の狩猟隊がやって来る、狩猟隊から動物たちを守ろうとした少年が取った行動とは...。
ストーリーとしてはこの作品に一番胸を打たれました。

ざっとこんな感じ。
ぎこちなさや粗削りな部分はあるものの、素朴で素晴らしい出来です。正確にはわからないけど、今回の作品をベースにして、以前観た「上海アニメーションの奇跡」に繋がって行ったのではないかな。
動く水墨画は素晴らしいのでチャンスがあればぜひご覧ください。

今回で「中国映画の全貌2002-3」の5回券を2枚使い切ってしまった。まだ、何作品かは観るかもしれんけどなぁ。

おしまい。