「キス★キス★バン★バン」

ただただ、感心してしまう!


  

大阪でも心斎橋シネマ・ドゥで公開が始まった「キス★キス★バン★バン」を観るためにシブヤ・シネマ・ソサエティまで歩く。
途中で焼き鳥屋の換気扇からいい匂いが漂ってきてお腹が鳴ってしまった。でもボクはお腹が空いているよりも、ちょっと眠たかったんだけど...。
坂の途中にあるビルの地下に降りていくこの映画館はちょっと変わった作りになっていて、エントランスがあって、劇場があり、その逆の位置に休憩所がある。ちょっと角度が緩くて「観やすい」劇場ではないけど、場所柄もあってかお洒落な雰囲気。客層も若い人が多い。この日は2/3ほどの入り。

妙な、それこそ映画のための設定のお話し。
その面白い骨組みを充分に生かして、膨らませてとっても楽しく仕上がっています。おすすめの一本。
主人公のフィリックスは殺し屋。ロンドンの殺し屋ばかりが集まって作っている組合に属している。どこか殺伐としたニューヨークが舞台ではなく、なんとなく暖かみを感じさせるロンドンが舞台っちゅうところがまたイイ。
腕利きのフィリックス(ステラン・スカルスガルド)だが、最近腕の衰えを感じている。以前のようにスマートに仕事がこなせなくなってきている。そこで、自分の仕事は見習中のジミー(「ビューティフルマインド」や「ロックユー」に出ていたポール・ベタニー、この人大成しそうな気がする)に任せて引退することを組合に宣言する。
でもなかなか上手くは行かない。金回りが悪くなり、急いで別の仕事を探さなくてはならないし、組合からは簡単に足を洗わせてなるものかと刺客を送られる、中途半端に付き合っていた彼女からは愛想を尽かされかけている...。そんなフィリックスがありついた新しい仕事は...。
しかしどうやってこんなプロットを考え付くんだろう。あきれるのを通り越して、ただただ感心してしまう。
彼の新しい仕事はなんとベビーシッター。しかも、預かるその子供は普通の子供ではなく33歳の「子供」なのだ。パパに大切に育てられた「子供」ババは、パパが世間の手垢にまみれるのを嫌がるあまり、生まれてこのかたただの一度も屋敷から外に出たことがない! 33歳の大人のなりをした「子供」。

フィリックスは最初はババの部屋で自分の仕事をまっとうしようと思うのだが、次第に息苦しさを感じはじめ(当たり前だ!)、とうとうババを連れて外に出かける。そこでフィリックスはババに世間を教え始める。最初は何事にも驚いてばかりのババだったが、凄い勢いでいろんなことを吸収する。そして、当然フィリックスの好みにあって成長していくのだ。だが、パパが旅行から帰ってきた。ババとフィリックスの間にはいつのまにか師弟関係? それとも友情? 何とも複雑に絡み合った心の交流が芽生えていた。仕事だと割り切っていたフィリックスにもつらい別れだ。そしてこの物語りが迎える結末は...。

次から次へと出てくるアイデアの豊富さ、見せ方の上手さに舌を巻いてしまう。音楽、衣装、そして部屋のデザイン、色使いなどちょっとした箇所にセンスの良さが感じられる。遊び心一杯で楽しませてくれて、最後にほろっとさせられる。なんともよく出来た映画だ。
フィリックスはもちろん、出てくる人物がみんな上手に色分けされて好演している。ジミー、ババ(クリス・ペン)、フィリックスのお父さん(ピーター・ヴォーン)、フィリックスの彼女(ジャクリーン・マッケンジー)、ババの彼女(マルティン・マカッチョン)、間抜けな殺し屋組合の面々、そしてババのお父さん(アラン・コーデュナー)。みんないい味出してるよ!
観て損がないと言うよりも、時間を作って、是非是非観て、楽しんでもらいたい映画です。場合によってはサントラも欲しくなるかもよ、バリー・ホワイトっていい歌唄ってます。
間違いなく年間を通じても上位に来る作品です。

三宮では近日中にシネ・リーブル神戸で公開予定(但しレイトのみ)。神戸の方やビデオシステムでの上映(シネマ・ドゥ)はどうも、って方はこちらでどうぞ。

おしまい。