「船を降りたら彼女の島」

愛媛の観光プロモーション映画


  

12月の三連休、突然だったけど伊予松山へ出かけた。
何年か前、前回松山へ行ったときには、地震に遭遇してしまい観音寺の駅で4時間も足止めを食い、泣く泣く松山泊まりだったなぁ。その教訓を生かして(?)今回は飛行機。飛んでいる時間はほんの30分強。瀬戸内海を一ッ跳びだ。
日曜日は砥部にある競技場でサンフレの勝利を見届け、道後温泉「椿の湯」で一年間の汗を流す。翌日は早朝から砥部町と伊予市の境にある障子山を歩き、下山後砥部温泉「湯砥里館」の湯につかりながら静かにこの一年の反省をする。のんびりとした旅(?)だった。

その松山で観たのが、愛媛県がタイアップして製作した映画「船を降りたら彼女の島」。
一般公開を前に愛媛県内で先行上映している。休みの日の最終回のせいか、松山随一の繁華街「大街道」にある松山サンシャインシネマにこの映画を観に来ていたのはボクを含めてたったの二人。淋しいねぇ。そう言えばこの夏、松江でも島根県で先行上映されていた「白い船」を淋しく観たなぁ(でもこの「白い船」はいい映画だった!)。
この作品、田中麗奈がデビューした「がんばっていきまっしょい」の磯村一路監督が再び愛媛を舞台に撮っている(原案・脚本も担当)。まぁ、同じレベルの作品をそうそうは連発出来ないので今回はどうかな?

この映画を観ながら思い出していたのは、大林監督の「青春デンデケデケデケ」。これは観音寺に住む高校生のお話しで、高校時代をエレキバンドに捧げた青春記。後半は観音寺を離れて東京の大学を受験しに行く主人公「ちっくん」が高校時代の思い出の地を巡礼して回るというストーリーになっている(若き日の浅野忠信も出ている)。
「船を〜」は東京で勤める主人公の久里子(木村佳乃)が、結婚を決意してその話しをするために愛媛の島に帰省するお話し。島に帰ったものの、両親に結婚の話しをなかなか切り出せない彼女は、自分の思い出の地を(愛媛県中)ウロウロする。
主人公の性別・年齢と香川か愛媛の違いはあるもののストーリーの骨子はそんなに変わらない。
でも、この「船を〜」は面白くないのだ。

久里子が結婚するのはいい。それは親に内緒で勝手に決めたことでも別に悪い話しではない。だいたい今日日の若者は親に相談もせずに結婚を決めるものだ(と思う)。
ではどうして久里子はその話しを親に切り出せないのか、何をうじうじ思い悩んでいるのか。そこが観ているこちら側に全く伝わってこない。それがこの映画のつまらなさの最大の原因だと思う。だから、彼女が兄や友人たちと思い出の地の巡礼に出かけたり、古い同級生の消息を尋ねたりすることが全然理解できない。そんなことする時間があったらささっと話しをして、結婚の準備をせい!
一方ちっくんの場合は、どうして彼が観音寺を出発する直前に思い出を訪ね歩く気持ちになったのかが痛いほど伝わってきた。それは映画の前半部分が丁寧にしっかり作られていたからだ(と思う)。

両映画を比較しても仕方ないけれど、「船を〜」はストーリー(原案・脚本)が良くない(弱い)し、ちょっとムリがある。それと主演の木村佳乃がちょっと弱い(細い?)。大杉漣や大谷直子らに負けている。綺麗なだけではなく、もう少し存在感がある役者さんを配すべきだったのではないかな? でもひょっとして彼女は愛媛出身?

愛媛県のプロモーション映画として観れば、それなりに良く出来ている。銅山の廃坑跡地や巨大なスタンド(?)がある校庭なんかには行ってみたいと思った。「しまなみ」の紹介の仕方は取ってつけたようでちょっと嫌味と感じたけど...。
寡黙で不器用な父親役を大杉漣が好演。この人がこんなに長く映っている映画を始めて観たような気がする。また、島にすむ久里子の幼馴染を演じる照英もいい味出しています。

そのうち大阪でも公開されるでしょう。愛媛県にゆかりあがある方やおひまであればどうぞ。

おしまい。