「ゴスフォード・パーク」

知らなかった世界を垣間見るチャンス


  

続けてレイトショーでようやく観たのが「ゴスフォード・パーク」。この映画は今まで知らなかった世界を見ることが出来るなかなか興味深い作品だ。
ただし、やたらと登場人物が多く、誰が誰なのかを把握するのにかなり時間がかかる。主人公のケリー・マクドナルドがもう一つ魅力に欠けるのと、ボクがあんまり好きではないエミリー・ワトソンが重要な役で出ているのもどうかもなぁ(でも、今回の役どころは彼女にマッチしている、と思う)。

1930年代のイギリス。郊外にある貴族・ゴスフォード家のお屋敷で数日間に渡り開かれるパーティがこの映画の舞台。一応、主人公はこのゴスフォード家の当主の(たぶん)姉・コンスタンス・トレンサム伯爵夫人(マギー・スミス)の召使いメアリー・マキーシュラン(ケリー・マクドナルド)。
このパーティに招かれているのは、この一家の親類縁者と映画スター、そしてアメリカ人でハリウッドの映画監督。英国貴族たちとアメリカ人の対比、そして貴族が連れてきた各々の召し使いたちの葛藤(?)などがこの映画の見どころでしょう。
様々に入り組んだ人間模様が入り乱れ、ストーリーも広げるだけ広がって行く上に、殺人事件が起こる。こんな展開でこの映画は終われるのかと、観ているこちらが心配してしまうけれど、スルスルと収束に向かって物語は動いて行く。そして、こちらも「やれやれ」って気になるから不思議だ。それにこの映画は犯人探しの謎解きに主眼が置かれているワケではないしね。

召使いたちとアメリカ人たちから見た英国貴族のありかたががなかなか面白く描かれている。
召使いは自分の名前ではなく、主人の名前で呼ばれるし、召使いたちが食べる食事の席順の序列も各々の主人の序列に従うのだから恐れ入る。この徹底された序列社会は見ていて滑稽でさえある。お客様を迎えるホストの家に仕える人たちも大変だ。一人のお客様に対して、一人かそれ以上の使用人が帯同してくるのだから。彼らの食事から宿泊の準備までもその家の使用人の仕事になるのだ。
ゴスフォード・パークには料理人だけでも5人以上いるし、厨房以外にも執事を筆頭に10名近くの使用人がいる(考えてみたら、こんなに多くの使用人を抱えなければならない貴族も出費が大変だ)。
使用人たちは忙しく仕事をこなしながらも、その合間に自分の主人や周囲の人々のゴシップや噂話、情報交換に余念がない。そして、その場で交される噂話を自分の召使いから聞くことを主人もある種楽しみにしているからちょっと不思議でもある。そしてこんなパーティの裏方は、まだ経験が浅いメアリーにとっては絶好の教育の場となっている。華やかな貴族の社交界の裏にはこんな世界があったのか!
ボクにとっても勉強になりました。

約2時間半の比較的長い映画。ちょっとエピソードを詰め込み過ぎのきらいはあるものの、観て損のない作品だと思います。残念ながら上映は終了しています。チャンスがあればどうそ。

おしまい。