「マーサの幸せレシピ」

空きっ腹には毒だよ


  

空きっ腹を抱えて会社帰りに観るには「毒」がある映画だ。
ドイツのハンブルクにあるフレンチレストラン。ここの厨房の主(あるじ)、女性シェフ、マーサが主人公。マーサは30歳過ぎ、独身。
彼女が作り出す様々な料理が次々に皿に盛り付けられ、お客様が待つテーブルに運ばれていく。それを見ているだけでも、お腹がグーグー鳴ってしまうょ!
レストランのオーナーは彼女の料理を「この街で二番目に美味しい料理だ」と評する。その理由はおいおいなんとなくわかってくる。
このマーサが二つの問題を抱えるところから物語りは動き始める。

マーサの姉はイタリア人の旦那との間に一人娘をもうけるが、随分前に離婚してからは旦那とは没交渉。ただ一人の身内であるマーサとは時折食事を一緒にするくらいだ。そんな姉が交通事故で突然死んでしまう。娘のリナは幸いかすり傷程度で助かる。しかし、独り暮らしのマーサはリナの面倒をみることになってしまう。突然の母親の死に心を閉ざしてしまったリナは食事も摂らない。今まで料理一筋で育児の経験なんて皆無のマーサは困り果ててしまう。
レストランではマーサの片腕である副シェフがそろそろ臨月を迎え、彼女の代わりに誰か腕のいい料理人を雇う必要があった。リナのこともあり、仕事を一日休んでしまったマーサが厨房で出会ったのは、陽気なイタリア人のマリオ。彼にこの仕事を奪われるのではないかと思ったマーサはオーナーに噛み付き、事あるごとにマリオにも敵愾心を燃やす。

私生活でも職場でもイライラを募らせるマーサは困り果ててリナをレストランの厨房に連れてくる。そして大人しくしているリナの姿を見て驚いた。自分の料理を一切食べなかったリナがマリオの作ったパスタを美味しそうに頬張っている!

何かにつけ完全主義で、自分にも他人にも厳しい。そして、自分の感情を押し込めてしまうというか、感情表現が下手くそで、何に対しても心から楽しめない。そんなマーサが、自分そっくりの姪っ子と突然一緒に暮らすことになり、その上自分とは全く正反対な性格のイタリア人のマリオと出会う。
セラピストも気付かせることが出来なかったことを、この二人がマーサの気付かせてくれる。
マーサがレストランから飛び出してリナを迎えに行くエンディングの10分ほどがとても素敵。こんな風に「予感」を感じさせる終わり方ってとても素敵ですね。大好きです。

いかにもドイツ人風のマーサを演じたマルティナ・ゲディックはなかなかいい。
今までに観たことがなかったタイプのドイツの映画でした。
もう暫く、Loft地下にあるテアトル梅田で上映しているようです。寒い夜に心が温まる素敵な映画はいかがですか? まずまずのオススメです。

おしまい。