「メルシィ人生」

人生は自己主張してナンボ


  

活きのいい風刺が利いたコメディ映画。
ボクの中にあるフランス映画そのもののような作品だ。大袈裟なアクションやセットを使わなくても、しっかり観る者の心を掴んで、笑わせて、考えさせてくれる。いいなぁ。

冴えない中年サラリーマン、ピニョンはゴム会社の経理部に勤めている。
ある日、トイレの個室にいると、人事部長が入ってきて、自分をクビにする話ししているのを聞いてしまう。ショックを受けた彼は家に帰ると、高層アパートの自分の部屋から飛び降り自殺をしようとするが、隣に引っ越してきた老人に思い留まるよう説得されてしまう。
ピニョンは2年前に奥さんから愛想をつかされた上に、一人息子からも相手にされていない。淋しく一人このアパートで暮らしていたのだ。
老人の部屋に招かれて、自殺の理由を話していると、この老人が妙な手段を使ってピニョンの危機を救ってくれると言う。そして、その手段とは...。

老人のお陰でなんとかクビを免れたが、そのお陰で社内にはピニョンには妙なうわさが付きまとう。
でも、一連の騒動を経て、今まで黒子役というか透明人間に徹していた彼が、はじめて自分の存在を社内のみならず、社会に対してもアピールし始めたのだ。
それなりの成果を収めると、人間って不思議なもので自分自身に自信がついてきて、物事もどんどんいい方へ回転していく。ピニョンもクビを心配していたのに、今では会社では昇進して、別れた奥さんを見下し、息子からは尊敬(?)され、そして新たにガールフレンド(?)も獲得するという順風万帆な生活だ。

この映画は、風刺と言うよりも「示唆」に富んでいるような気がする。
物凄い閉塞状態にある日本においてこそ、この映画のようにちょっと疲れたおじさんが、ひょんなことから生まれ変わって、疲れを吹き飛ばすどころか自信を持っていく様子を描いた作品が必要なのではないでしょうかね。 結局、ピニョンが正直者であるところにも好感を覚えました。

しかし、出演者が誰も彼もみんな芸達者なのが凄いね。ピニョンはもちろん、経理部長、社長、人事部長、広報部長そして隣の老人などなど...。肩に力が入っていない演技で、素直にこの物語りに入っていけます。
中盤以降はやや駆け足で、話しも取ってつけたようになてしまうのが惜しいけど、導入から中盤まではなかなか良く出来ています。このアイデアが上手くいくのか、そしてピニョンはこの後どうなるのか心配になり、そしてオドオドするピニョンの姿に何故か共感を覚えてしまうのです。

会社の内部はきっとセットだろうなぁ。凄いオフィス兼工場です。使っているパソコンはみんなMachintoshだから驚いてしまいます(映画の中では、かっこいいオフィスに限ってMacが使われていることが多いよね)。オフィスや食堂の壁が透明のガラスやスリガラスだったりするところも凄い。こんなオフィスなら下手に鼻くそもほじれないよね。

この日は火曜日でテアトル梅田はは「メンズディ」。男性は1,000円均一とありがたい設定。でもお客さんは多くはなく20名余り。もう暫くはテアトル梅田で上映しているはずです。なかなか面白いので、是非テアトルへお越しください。
ところでテアトルに韓国映画「猟奇的な彼女」のポスターが掲示されていました。当初は、心斎橋のシネマ・ドゥでのみの公開と聞いていたのですが、テアトルでもやるようですね。この映画はボクが今年観た映画でも上位に入る映画ですので、公開された暁には一人でも多くの方に観ていただきたいですね。お楽しみに!

おしまい。