「モンスーン・ウェディング」

みんな雨が流してくれる


  

今回ご紹介するのはインド映画の「モンスーン・ウェディング」。
公開初日に観てきました。会場は梅田ガーデンシネマ。ひょっとしたら満席かもしれないと思い、事前に電話で確認したところ「お席は充分にあります」とのこと。映画が始まる頃でだいたい1/3ほどの入りでした。ちょっと淋しいね。

2001年ヴェネチア国際映画祭で、グランプリ(金獅子賞)に輝いた作品。
ボクは唄と踊りがてんこ盛りのいわゆる「マサラ・ムービー」と呼ばれるインド映画には親しんではいないのだけど、この「モンスーン・ウェディング」は見ごたえのある佳作です。

ニュー・デリー近郊に住むある一家。一人娘の結婚式を4日後に控えた日からこの物語りは始まる。結婚式を挙げる娘の心の葛藤(?)を縦軸にして、この「濃い」一家が抱えるさまざまな人間模様と、披露宴を取り仕切るディレクターの青年(?)の恋の行方が折り重なるように同時進行で語られていく...。
予告編がとても良く出来ていたけれど、本編も素晴らしい!

インドのパンジャブ地方(どこのことだ?)伝統にのっとった結婚披露宴には圧倒されるとともに、この地方独特の血族の繋がりの「濃さ」にも驚かされる。
主人公の一家は上流階級に属しているんだろけれど、王侯貴族ではないし、父親はあまりにかさむ結婚費用に音を上げそうにさえなっている。いやぁ、娘を結婚させるのは大変なんだなぁ!
結婚の象徴とされるのはマリーゴールドの燃えるような橙色の花。これでもかってぐらいに大量にディスプレイされる(今までマリーゴールドの花は好きじゃなかったけど、この映画でこの花に対する評価が変わりました、来年の夏はこの花をたくさん咲かせるぞ〜!)。

出てくる役者さんがどの人もみんな一癖も二癖もありそうで、なかなかいいんです。
一応主演のアディティ役のお嬢さん(ヴァソンダラ・ダス)も、角度によってはなかなかの甘い美形で、観ているこっちもとろけそうになるんだけど、人生を割りきった醒めた側面も覗かせて奥が深そう。
がりがりに痩せていて貧相な感じのウェディング・プランナーのPKを演じるヴィジェー・ラーズも味がある演技で、人生の悲哀をたっぷり見せてくれます。

正直言って、よくわからない部分もあるんですけど、そんな「?」をぶっとばす勢いで映画は進んで行くので、小さな疑問はどうでもよくなって行きます。
そして、向かえた結婚式の当日。

さぁ、これからというところで、この地方独特の大雨にみまわれる。
花嫁も花婿も、みんな雨の中。
身分も立場も考え方もまるで関係無く、この結婚式に関係している人たちはみんなこの雨に濡れてずぶ濡れ。
そして、この雨が過去も未来もすべてを洗い流してくれるんだねぇ。

楽しいだけの映画ではないんだけど、お時間が許せばぜひご覧下さい。
梅田ではガーデンでもうしばらく、神戸ではアサヒシネマで10/26から、京都でも京都朝日シネマ(ここも来年の1/29で閉館が決まったようですね...)で11月に公開されるようです。

おしまい。