「千年女優」

一気に1,000年を駆け抜けて行く!


  

淀屋橋にある朝日生命ホールへは初めて行きました。場内の感じは京都にあるシルクホールに似ているかな、古さ加減とかがね。全体に傾斜が緩くて、映画の上映にはあまり向いていないような気がします。
この日は試写会で、上映前にこの映画の監督・今敏さんのトークがありました。

正直言って、この映画にはそんなに期待していなかった。だから期待していない分だけ、この映画を素直に見ることができた。
そしてこの映画を「面白い映画」だと思った。アニメだからこそ成し得る作品だ。

お話しは、昭和30年代の日本映画の絶頂期、当時人気の頂点にいた女優・藤原千代子の一代記。彼女はそんな絶頂期に突然引退し、山奥の庵で隠遁生活を送っているのだ。
そんな千代子の庵をドキュメンタリー番組の取材で訪れたのがテレビ製作会社の社長とカメラマンの二人組。芸能界を引退し、静かに暮らしている千代子がどうしてこのテレビ番組の取材を承諾したのか? それは社長がお土産に持参した古びた鍵のためだったのだ。
千代子にとってこの鍵は何もにも代え難い大切な鍵なのだ。 社長からその鍵を受け取った千代子は、その鍵によって自分の想い出の扉を開け放たれたかのようにカメラの前で語り始める。そして、いつのまにか千代子は戦前の女学校時代に戻っている。彼女の語り口に圧倒された二人はいつの間にか、彼女を近くで眺める傍観者(?)として彼女の半生の旅に同行するのだ。

千代子がどうして普通の女学生から女優へと歩むことになったのか、そこからこのストーリーは始まる。その大切な理由はこの古びた鍵が握っていたことがだんだんわかってくる。
そして、千代子の想い出の旅と連動するように、当時の市井の情景とその時々に千代子が出演した映画の場面とが実に上手くリンクされている。千代子と社長、カメラマンは戦国時代から幕末そして戦中、戦後、さらに近未来までおよそ1,000年を一気に旅していくのだ。
次々に現れる「あっ、このシーンは!」という古い日本映画の場面の連続にただただ目を見張るばかり。その出典(映画)を知っていても知らなくても関係ない。そんなシーンを千代子はそれこそ一気に駆け抜けて行く。
このあたりの見せ方がとても上手く、ひどく冷めた目でこの映画を観始めたボクは冒頭の15分ほどで一気に「千年女優ワールド」へ引き込まれてしまった。 とにかく、凄い。ちょっと言葉では表現できないほど。
誰にでも凄いのかどうかはちょっと自信が無いけれど、お時間があれば、一度劇場でどれだけ凄いのかお確かめてもらいたい。

千代子の最後の一言をどう判断するのかは、あなた自身です。

ヒットすればいいな。そんな気がしました。
梅田では9/14からLoft地下にあるテアトル梅田で公開予定です。他にもミナミや三宮でも同日から、京都では少し遅れて上映されます。
社長さんがイイ味出してますよ。

おしまい。