「able エイブル」

思わず、はっとしてしまう


  

この映画は予告編を観たときから気になっていたし、いろんな映画評を拝見しても気になる作品だった。でもなかなか順番が回ってこなくて、とうとうレギュラー上映が終わり、モーニングショーのみの上映になってからようやく足を運んだ。
土曜の10:30からにもかかわらず、40名以上の入り。これには正直言って驚いた。一桁のお客さんかなと思っていただけにね(シネ・ヌーヴォさんごめんなさい)。

もっと早く観れば良かった。そして、多くの人に勧めれば良かった。

劇的な演出があるわけではなく、お涙頂戴の盛り上がりがあるわけではない。そんなものを狙っていない、あるがままのドキュメンタリー作品だ。
ボクは、受け入れを決意した米国人夫婦に、ホームステイに出した親に、彼らを受け入れてくれたアメリカの社会に、そしてアメリカに出かけて行った二人に大きな拍手を送りたい。
そして、毎度のことながら、この映画を通じて知るまでボクがダウン症や自閉症について何にも知らなかったことを素直に反省したい(もっとも、今でもほとんど何も知らないのも同然なんだけど)。

19歳のダウン症のゲン、17歳で自閉症のジュン。この知的障害を持つ二人がアメリカのアリゾナ州で3カ月のホームステイをすることになった。作品はこの二人を受け入れることになった米国人夫妻の目を通じて彼らの3カ月を追っている。
二人はおそらくアメリカを訪れるのは初めてだろうし、英語も全く出来ない。そんな二人がいきなりアメリカ人の社会に放り込まれて一体どうなるのだろう。行く方も、受け入れる方も不安が一杯だったはずだ。でも、ホスト夫婦の楽観的な「何とかなるよ」という考え方がいい方向へ向いていくのだ。
この夫婦の何でも素晴らしい体験だと受け止められる前向きな姿勢。そして、ゲンとジュンジュンを通じて自分たちが成長していくというプラス思考はほんとに素晴らしい。

そして、ゲンとジュンが二人ともいい奴なんだ。この二人を観ていてボクもどれだけ励まされたことか。また、この二人をボクも抱きしめて上げたい! 
途中で知り合った中国人のお母さんが言っていた「この子たちは、情報が入っても、他の人とは違う引き出しにその情報を入れてしまう。だから、答えを引き出すまでに、他の人よりも少し余計にじかんがかかるんだ」という言葉に、はっとしました。
ボクも今度から、ダウン症の子供たちに出会ったときに、今までとは違う態度で接することが出来るような気がします。

お時間があれば是非ご覧いただきたい映画です。モーニングショーのみですが、もうしばらく九条のシネ・ヌーヴォで上映中です。

おしまい。