「エトワール」 |
才能を育てる土壌 |
東中野から渋谷に戻り観たのはBunkamuraル・シネマでロングラン公開している「エトワール」。
パリのオペラ座を本拠地にするバレエ団のお話し。と言ってもドキュメンタリーで、特に筋があるわけではなく、彼らの日常をそれこそ淡々とスケッチしている。でも、そこには「本物」だけが持つ、味わい深い日常があるのだ。
オペラ座のバレエ団に入るためには、付属のバレエ学校へ入ることがその第一歩。この学校へ入ることから始まり、そして学内でも常に競争だ。この学校を出ても必ずオペラ座に採用されるとは限らない。生徒が何人いて、何人採用されるのかはわからなかったけど、試験を間近に控えた生徒たちは真剣に練習に取り組んでいた。もちろん、採用されてからもずっと競争だ。 「スジェ」や「コリフェ」のダンサーたちは役をもらうために必死だ。自分に与えられた役だけではなく、少しでも多く出番がある役や個性が発揮できる役を射止めようと努力する。怪我や他の理由で代役が必要なときにいつでもその代役に自分がなれるように複数の振り付けを憶え、踊るのだ。練習場で柔軟体操をしながら自分が狙う役の練習を見て、音に合わせて踊る。ステップを憶える。見えるところ、見えないところ関係なしに自分を磨き続ける。 緊張感で一杯だ。しかし、緊張ばかりではない。女性のダンサーは年齢との闘いもあり、限界を感じて母親になることを選ぶダンサーもいる。エトワールの男性ダンサーも「考えたくはない」と言いながら引退後の自分の人生の設計図を引いているようだ。 「ある日「エトワール」に任命されても、「エトワール」になったからと言って突然上手くなるわけじゃない。昨日までと同じ欠点を抱えたままだ。「エトワール」の名に恥ずかしくないような踊りをお客さまに見てもらうために努力するだけだ」
ボク自身は才能もなければ、たいして努力もしない凡人だから、このエリート天才集団のオペラ座のバレエ団の素顔に対して素直に感動した。そして、彼らの公演を一度生で見てみたいと思いました。 おしまい。 |