「公共の敵」

シリアスさとコミックさ


  

今回は福岡へ行ってきました。「第16回福岡アジア映画祭」。
会場は天神にある岩田屋ジーサイドにあるNTT夢天神ホール。目玉はオープニング作品の「公共の敵」とコンペ作の「悪い男」の韓国映画2本。両作とも今春韓国で公開されたばかりのヒット作。運がいいことにボクは両方ともソウルで観ています。こんなに早く日本語字幕付きで観られるなんて幸せすぎます。この他にも4本、合わせて6本を観てきましたので、しばらくはこの映画祭のレポートになります。
思っていた以上に、手作り感覚でアットホーム、こじんまりとした映画祭。とても親近感が持てました。過去にも、この映画祭で上映後に日本でメジャー公開された作品が何本もあります。そんな実力と選別眼を持っていらっしゃるのに、この親近感はたまりませんね。
ボク自身は単なる観客になりきり、何のお手伝いも出来ませんでしたが、今後もがんばっていただきたいです。ありがとうございました!

さて、それではオープニングを飾った「公共の敵」からご紹介しましょう。
(ストーリーの詳細については3月の偽ジェ通信をお読みください。)

この映画は、字幕が無くても有ってもそんなに印象が変わらなかった。
それは、ストーリーがいいからなのか、役者さんの演技がいいからなのか、演出がいいからなのか、それともこの三っつが複合した結果なのか? それはわからないけれど、わかりやすくていい映画であることは間違いありません。

もう物語りは一応わかっているので「驚き」はない。その分、細部にまでこだわって観ることが出来た。
イソンジェの悪辣ぶり(彼の仕事内容の詳細は知らなかった)、ソルギョングのいい加減ぶりが字幕によって一層明らかになった。そして、ソルギョングを見守る暴対班のメンバーの優しさも。
今日のように、ただ存在するだけで全身汗にまみれるような日には、ボクもアイスのショーケースに頭から突っ込みたくなりますよ。ほんまに!
「算数」というオヤジも、やっと意味がわかった!
露天で果物を売る青年とソルギョングとコンビを組んでいる刑事さんは、今後に注目ですね、名前は知らないけれど。

イソンジェは、何かに「彼の演技は壁に当たっている」と書いてあった。ボクもそう思う。今までとはまるでイメージが異なる今回の役どころなんだけど、このキャスティングで彼の新たな一面が引き出されたとは思えない。
「公共の敵」を見事に演じきっているのだけれど、何かが足りないような気がする。「エンジェル・スノー」など今までの演技で見せた「優しい男」がイソンジェには似合っているのかもしれないなぁ。今後は汚れ役と、もう少し「笑いが取れる」役どころにチャレンジしてもらいたいですね。

今回の字幕付を観て思ったことはもう一つある。
それは、物語の後半でイソンジェがどうしてやすやすとソルギョングの誘いに応じてしまったのか、ということです。彼の立場から言えば、カン刑事の暴走気味の取調べに対して、弁護士の同席もなしに応じるなんてちょっと考えられない。社会的影響力を発揮して、もっとスマートに対応しても不思議でもなんでもないのにね。もっとも、そうなれば、ストーリーとしての面白味には欠けてしまうのかも、しれないけれど...。
なんと言っても、この映画の真骨頂は、「ソルギョングの鉄拳が『公共の敵』を倒す」ところにあるのですから。なにしろ、「俺が殴り倒した相手は、四列縦隊で、グラウンド四周(だったっけ?)」。

会場には監督のカンウソク氏がゲストでお越しになっており、上映後のティーチインでは気さくな感じで一つ一つの質問に丁寧に答えていらっしゃいました。

日本での公開は「未定」だそうです。残念ですね。近年、国際市場において、韓国映画の価格が上がってきて、以前の数倍から10倍になったとか。配給会社も単館系で細々と上映する規模のロードショーでは元が取れないようですね。「チング」ももう一つやったしなぁ。この映画で主演のソルギョングもイソンジェもいい役者さんですが、ハンソキュゥやイヨンエほどの知名度はないしなぁ。もったいない!
とにかく、日本で公開の際には皆さんにご覧いただきたい秀作です。

おしまい。