「下女」

コメディとしてリメイクしたら面白いかも


  

続けて観た「下女」は何とも不思議な作品だった。
ちゃんとしたフィルムが現存しないのか、プロジェクターを使ったビデオ上映。画面はモノクロで、途中、フィルム一巻分は英語字幕が入るという変わり種。
キムギドク監督にも、韓国映画にとっても、エポックメーキングな作品だという。前に観た「死にたいほどの経験」と較べると、古さはそう感じない(それは、この映画の99%が屋内のシーンだということも関係あるでしょう)。古さというよりも、郷愁とも呼ぶべき懐かしさと同時にモノクロ映画独特のおどろおどろしさを感じる。

さて、お話し。
主人公は恵まれた音楽家。演奏家ではなく、紡績工場にある女工さんのコーラス部の指導をしたり、家でピアノの個人レッスンをして生活している(らしい)。妻の内職のかいもあり、今回、二階建ての家を新築している。女の子と男の子の二児に恵まれ幸せな家庭を築いている。ただ、お姉ちゃんは脚が不自由で松葉杖での生活だ。
この幸せな家族が、完成した新居に入り、住み込みの家政婦(下女)を雇うことから、徐々に崩壊していく様子をコミカルではなくシリアスに描いています。
この悪魔のようなストーリーには、エンディングも含めて許容範囲を超えるムリなところや「?」なところもあるのですが、40数年前の作品だと思うと、頷くしかありませんね。

この映画で家政婦を演じる若い女優さんがいい。クリっとした目とスリムなスタイルが印象的。ずいぶんと損な役なんだけど、小悪魔的な魅力を振りまいています。
この一家の小学校低学年ほどの男の子を演じているのが、今をときめくアンソンギ。事前にそのことを知っていなければ気が付かなかったでしょう。そう思って見れば面影もありますが...。
モノクロの画面とドロドロデンの音楽と相まって「ウルトラQ」を思わせますね。
また、韓国の主婦はちょっと前まで、家庭で韓服を着ていたのですね。
ねずみ取りの劇薬をご飯にまぶして台所に置いていたら、それをネズミが食べて昇天してしまうのには驚きました。

家政婦と彼女を雇った一家の主従関係がある出来事をきっかけに崩れ、立場が逆転していくこのストーリー。舞台を現代に置き換えて、コメディとしてリメイクしたら面白いかもしれませんね。

次回は、このキムギドク特集の三作目「異魚島(イオド)」をご紹介します。

おしまい。