「友へ/チング」

日本の劇場はヘンだ


  

世の中はゴールデンウィークの真っ最中だと言うのに、ボクは何処へも行く当てが無くこうしてiMacくんの前にいる。
去年の今頃はソウルにいたのになぁ。淋しいものです。
庭仕事を片づけて、ようやく一息入れました。今からふかしサツマイモをこさえてお茶にでもしましょうか。今日からの四連休はどうして過ごしましょう?

去年ソウルで観た映画「チング」が少し前から日本でも公開されている。情報によると、お客さんの入りが芳しくないらしい。シュリのような派手さはないし、恋愛ものでもないしね。ある程度予想していたものの仕方ないか。
ボクが梅田のOS劇場へ行ったのはGWの谷間である5/1。前売りを持っているのに映画の日に行くのはもったいないけど、これも巡り合わせで仕方ない。
映画の日でもきっとガラガラやろな、と思っていたけど、上映前に100名ほどの人が列を作ってロビーで待っているではないか! やるねぇ。ちょっと安心しました。若いお客さんはあんまりいなくて、中年以上の方が多かったですね。

ソウルで一度観た映画を日本語の字幕付きで(と言うか、日本の劇場で)もう一度観るのは、嬉しいような怖いような。
お話しが良く分かるのはもちろん嬉しいんだけど、ボクが勝手に「こうちゃうかな」と想像して理解していたのが、しょうむないことやったりすると、ちょっとがっくり。でも、字幕のお陰で話しの伏線が分かると、思わず膝を打つ、「そうやったんか!」
お客さんの反応も心配だ。ソウルや香港のお客さんは反応がストレート。面白いところでは声を出して笑うし、悲しい場面では人目をはばからず涙ぐむ。が、日本の劇場は爆笑の場面でもざわめく程度か、声を押し殺して笑っているほどだ。まるでお寺のお堂でお経を聞いているようなもんだ。私語は困るけどもう少し映画を観ながら喜怒哀楽を表に出してもいいんとちゃうかな。
今日のように、お年を召した方が多いと、まるで水を打ったようにシーンとしている。ボクだけがちょっと笑っているから、暗闇の中、何度かボクの方を振り向く人もいたぐらいだ。
周りの人が笑っていると、そんなに面白くなくても、おかしかったり楽しかったりするもんだ、日本の劇場でみんな能面みたいな顔をして映画を観るのをやめませんか。

さて「友よ」という邦題も付いた「チング」。
ボクの理解とそうかけ離れているわけではなかった。
でも、ユオソンの家の便所でチャンドンゴンが「使い走り」と自分で卑下しているとは気が付かなかった。この4人はもっと対等な付き合いをしていたと思っていたんだけどな。
それにしても、この二人の芸達者振りには驚かされる。高校生の役(高校生と呼ぶにはちょっとムリがありそうだけど)から30才くらいまで、多彩に演じ分けている。さすが。

どうしてこの「チング」は日本でそんなにヒットしなかったのだろう。
韓国では70年代から80年代に青春時代を過ごした男のお客さんが多かったと言う。ちょうど今40〜50代のおじさん達が、釜山の街を駆け回る4人に自分の子供時代から青春時代までを重ね合わせたんでしょうね。
凄い煙を出して走る蒸気自動車の後を追いかけたり、エロビデオを観たり、 チューブで作った浮き輪で海水浴。女子校の文化祭に押し掛けて女の子だけのロックバンドの演奏を楽しみ、淡い恋心を抱く。デートするのはなんとローラースケート場だ。そして、ケンカと男4人の友情。
自分の想い出、そして青春時代に自分は出来なかったけど、こんなことしたかったと思っていたことを全部この4人がこの映画でしてくれる。この4人のいずれかに若き日の自分の姿を見ていたんだと思う。
でも、日本人にとっては、この映画の中で自分を重ねられなかったのではないでしょうか。確かにどこか懐かしい匂いはする、こんな想い出もあったなぁと思う。だけど何か違うと違和感を持ったんでしょう。それは文化や土壌が違うから仕方ないかもしれないし、ヤクザに対する考え方の違いもあるかもしれませんね。

ユオソン、チャンドンゴンともに子役が似てる。探すの苦労しただろうなぁ。 この映画でユオソンは一流のスターになりましたね。

ゴールデンウィークが明けてから、関西でメジャー公開されていない韓国映画が相次いで上映されますね。いずれも劇場公開ではないのですが、5/10〜5/13は十三にある第七芸術劇場で「大阪韓国映画祭2002」というタイトルでの上映会。「私にも妻がいたらいいのに」と「ライバン」に注目です。
5/18、19は「大手前大学 Korean Film Festival」(両日とも要招待券、詳しくは大手前大のweb-siteをチェック!)。ここでは18日に「春の日は過ぎゆく」がホジノ監督とユジテの舞台挨拶付きで上映されます(舞台挨拶がイヨンエやったら万難を排して駆けつけるのですが...、ユジテなので普通に応募しただけです)。19日は「八月のクリスマス」と「反則王」が上映されます。

おしまい。