「バスを待ちながら」

キューバは桃源郷?


  

一度キューバへ行ってみたいなぁ。
どんなところなんだろう?
そんなことを思わせるようなすばらしい映画がこの「バスを待ちながら」。今年は当たり映画が多い中でもオススメの一本です。

ある青年エミリオ(ウラジミール・クルス)が故郷へ帰るためにバス停にやってくる。バス停と言っても、停留所の看板が一本立っていだけではなく、日本でいうとバスターミナルみたいなもんですね。
この古ぼけたバス停にはもう4、50人がバスを待っている。最後尾を探しているこの青年の次にやって来たのが、若くてチャーミングな女性ジャクリーン(タルミ・アルバリーニョ)。青年は一目で彼女に恋してしまう。
ところが、このバス停にはバスが来ない。たまに到着するバスにも空席はひとつかふたつしかない。長い人はもう二日もここでバスを待っているという...。
キューバって凄いところだね。いつ乗れるかも分からないバスを何日も待つことができるなんて。その太っ腹な精神構造に感動してしまいます。
別に大地震の後とかお祭りや盆・正月と言うわけではなく、単にありふれた普通のただの日なのに。

主人公は一応エミリオとジャクリーンなんだけど、この二人はむしろ狂言回しで、実はここでバスを待つ人一人ひとりが主人公。盲人のおっさん、エンジニアとその助手、倦怠期の夫婦、このバスターミナルの所長、料理が得意な未亡人、孫に会いに行く老人、子供連れの夫婦...。
いろんな人がいて、それぞれがエピソードを積み上げて物語を編み上げていく群像劇ですね。意外な展開があって、ドキっとしたり、ハラっとしたり、そして思わずホロっとしたり、ニヤニヤしてしまう。
途中でバスを待つ人は半分ほどになってしまうんだけど、いつしか奇妙な連帯感が生まれて、ひとつの大きな家族のようになる。食べ物を分け合って料理を作って、みんなで即席の大きなテーブルを囲む、そして食後はダンスだ。まるで夢の中にいるみたいだ。

エミリオのあと一押しの押しの弱さがひっかかるけどそれには目をつぶりましょう。とっても楽しめる、ある意味桃源郷を描いたような作品。

キューバへ行ってみたいけど、行ったら最後、絶対戻って来れへんやろなぁ。

扇町ミュージアムスクエアで4/19までモーニング&レイトショーで上映中。ボクが観たのは日曜の朝でしたが、20名ほどの入りでした。お見逃しなく!

おしまい。