「素敵な歌と舟はゆく」

これがパリの厳しさか


  

さて、もう一丁ミュージアムスクエアに居残って観たのは「素敵な歌と舟はゆく」というフランス映画。お客さんは、また少し増えて7名に。客層は全然違うけどね。

ボクとしては何とも後味の悪いへんてこな作品だった。

主人公は腰を抜かしそうな大富豪の息子・ニコラ。この息子が良くできた息子で、今の地位に甘んじることなく、郊外にあるお屋敷を抜け出しては列車の車内清掃やカフェの皿洗いや商店のガラス拭きなどのアルバイトに精を出し、ホームレスのおっさんや街の若者達と仲良くなっている。
そして、ふとバイト先の向かいにあるカフェの看板娘に淡い恋をする。

というのがこの映画の大まかな輪郭なんだけど、この映画は(たぶん)パリの街角でニコラが歩き回り、すれ違う人たちに話題が次々と広がっていく。この広がりを追う前半はとても良くできている。
カプセルホテル並の部屋で寝起きしながら、借り物の単車を使ってナンパに余念がない青年。取り壊し寸前の廃墟に潜り込んで壁を叩いて、壁の中に埋め込まれているかもしれない宝物を探す二人。様々な人が出入りする川に係留された船。何をやってもどじな事ばかりしてしまうプロレスラー並の体格をした黒人。何故か獣医さんの診察室でヴァイオリンを練習する少年、などなど...。
彼らはニコラを直接の知り合いばかりではない、でも、少しづつ迷路のように広がってやがて輪を作っていく。

が、残酷と言うか、常軌を逸してしまう。
愛人をガス爆発で殺して(?)しまう古物商の店主。老人が銀行から降ろしてきたばかりのお金を奪う。そして、とうとうスーパーにピストルを持って強盗に入ってしまう。
この後半部分のお話しはどうだかなぁ。前半がステキだっただけにどうもいただけない。でも、これがパリの厳しさなのか...。

ゆったりした流れはフランス映画そのもの、この流れはいいんだけどな。

おしまい。