「ピアニスト」

観ていて悲しい物語り


  

先日観た「ビューティフル・マインド」は天才と狂気は紙一重だと言うことを描いた作品だったが、この日の「ピアニスト」もある意味では同じ題材を扱った映画だ。ただ、主人公のピアニストが「天才」なのかどうかはわからないけどね。
今回ボクに分かったのは、天才と狂気も紙一重だけど、普通の生活と狂気(?)もいつも隣り合わせだと言うことだ。

エリカ(主人公のピアニスト、イザベル・ユペール)がどのような過程を経てマゾヒスト(妄想の中だけ?)になって行くのかは映画の中では詳しくは語られていないが、母親からの過干渉とピアニスト(芸術家?)としてのプレッシャーから少しずつ心の均衡がねじれていったのだと匂わせる。
彼女はレッスンの後、女一人でポルノショップに入ってビデオを見たり、ドライブインシアターで行為にいそしむアベックのクルマを覗き込みながら放尿するなんて、もう趣味の範囲は明らかに超えており、まさしく「異常」だ。
そんな異常的な性癖とウィーン市立音楽学院の大学院で厳しく一途な教授という顔とのギャップがほんと何とも言えない。

観ている者を愉快にさせる作品ではなく、心のバランスを著しく崩してしまった悲しい物語、孤独な都会(人間?)生活の一つを描いた作品だと思います。
美しい(かどうかは知らないけれど)ウィーンの街はほとんど出てこなくて、大部分のシーンが学院のレッスン室と彼女のアパートの部屋という極めて閉じられた状況で撮られているところも暗示的だ。
普通の恋愛ではなく、こんなカタチでしか自分を表現できないエリカの姿に悲しさというよりもむなしさ、情けなさを感じてしまいます。それとも、純粋培養による、未熟さなのか。

確かに、主演の二人は怪演。ブノワ・マジメルはなかなかかっこいいよ。
今週一杯、新梅田シティのガーデンシネマで上映中。
オススメはしませんが、怖いもの見たさにどうぞ。
次回は同じ晩にレイトショーで観た「UFO少年アブドラジャン」をご案内します。

ところで、今月一杯でまたしても新しい別れが...。
心斎橋ビッグステップのパラダイスシネマが今月末で休館(実質は閉鎖らしい)することになったそうだ。全然知らなかっただけに、驚きを通り越して、唖然としてしまう。確かに、最近は客足が落ちてきているとは感じていたんやけど、びっくり。
そして、残念。
先日も扇町のミュージアム・スクエアが年内で閉館と言うニュースを聞いただけに何とも言えません。
パラダイスシネマには何回も行ったし、ボクにとっては準ホームグラウンドと思っていただけになぁ、ショックです。

おしまい。