「鳥は閉曲線を描く/The Bird Who Stops in the Air」

「よくわからなかった」


  

朝の8時過ぎにホテルで朝食を取っただけで、11時から連続して映画を4本も観ると、正直言ってもうふらふらだ。しかも、頭をフル回転させて集中して観なければならないからなおさらだ。途中で口にしたのはロビーにある自販機で買ったコーヒー2杯とコンビニで買ったペットボトルの水だけ。
4本目を観終わった8時過ぎには、さすがにもう1本観る気力はなく、ソウルで唯一何軒かの店を知っているシンチョン(新村)へ地下鉄で向かった。
ブテチゲにしようか、石焼きの焼き肉にしようかとも思ったけれど、やはり一番のお気に入り、サムギョッサルにする。

さて、ふらふらになりかけて観たのは「鳥は閉曲線を描く/The Bird Who Stops in the Air」。シネキューブにあるもう一つのスクリーン、アートキューブで上映。これまた、この日が初日。
アートキューブも映画だけではなく、様々な用途に使えるように工夫されているホールで、シネキューブのおよそ半分ほどの座席数。こちらはすり鉢状になってはいないけれどね。お客さんは40名ほど。大学生から20代後半くらいの人、特に女性が目立ちましたね。

正直に言います。 「よくわからなかった」

主演は「公共の敵」にも出ていたソルギョング。
彼は大学で教鞭を取っていて、映画か映像関係の講座を担当している。学生達からは信頼はされているようだが、好かれてはいないようだ。
ソルギョングには中学校で教師をしている恋人がいる。でも、彼はこの恋人と結婚する気はなく、だらだらと関係を続けているだけのようだ。
大学でも私生活でも閉塞感が一杯のソルギョングは、大きな川の堤防へ出かけて行き、鳥が飛来するのを待っている。そして、他の探鳥に来ている人たちと言葉を交わす。
そんな彼が思い出すのは、子供の頃、窓や壁が落ちて、陽の光が一杯に射し込む廃屋で、鳥の巣と卵を見つけた想い出だ。

走らない、怒鳴らない、(ほとんど)酔わない。まして殴ったり、銃を振りかざすこともない。もちろん犯罪も犯さなければ、捜査もしない。敵意や喜怒哀楽を言葉ではなく全身で表現することもない。こんな静かなソルギョングは初めてだ。
充分こなしきっているし、彼の新しい一面を見たように思うが、何か似合わない。ちぐはぐなような気がする。
芸術的な完成度は高いのかもしれないが、残念ながらボクにはさっぱり...。
今までのソルギョングのイメージで観に行くと裏切られますよ。

もし、日本で上映されることがあるなら、確認の意味で是非観たいものです。

シンチョンからホテルへ戻る道すがら、モリアキ総務部長へピッタリのお土産を発見。厳しい値引き交渉を行った結果、購入しました。1年遅れの引っ越し祝いですね。お楽しみに!

おしまい。

※追記※
その後の調査によると、この映画は少し前(1999年に完成)に作られて、韓国国内では公開されずに「お蔵入り」状態だったとか。また、ソルギョングの「初」主演作だったとのことです。ソルギョングの原点はここにあったのか!