「血も涙もなく/No Blood No Tear」

サングラスばかりなのは残念だ


  

そして観光公社で教えていただいた「シネキューブ」へ移動。コア・アート・ホールからはじゅうぶん徒歩圏内。地図を頼りに歩いていくが、目星をつけていた場所には見あたらない。上映時間が迫っているので少々あせる。ここにも二つスクリーンがあって時間が合えば、「血も涙もなく/No Blood No Tear」「鳥は閉曲線を描く/The Bird Who Stops in the Air」の2本観るつもりだ。
ここには映画館があるわけないやろ、って感じの高層オフィスビルの地下が目指すシネキューブだった。梅田で言うとリーブルとかガーデンシネマみたいな感じですね。ここはもっとかっこ良くてロビーは映画館というよりもなにか美術館のような趣だ。
館内も映画館としては珍しく客席がすり鉢状にの傾斜になっている。舞台も大きい。映画の上映以外にも、演劇の公演なども意識して作られたようだ。傾斜も程良く、座席の前後の間隔も広い。椅子もいい。まだ新しくなかなかいい劇場だ。お客さんの入りは70名ほどで1/4ほどしか埋まっていないのはちょっと淋しいけどね。

お目当てはチョンドヨンという女優さん。ぽっちゃりとしたゆで卵のようにつるっとしたほっぺが印象的なかわいい人だ。ボクが観たのは「コンタクト/接続」というハンソキュウと共演した作品だけだけど、「ハッピーエンド」「私にも妻がいたらいいのに」「我が心のオルガン」などにも主演している。今、韓国でトップ女優さんであり、ヒットメーカーだ。そのチョンドヨンの最新作でこの日('02.3.1)に初日を迎えたのが「血も涙もなく/No Blood No Tear」という作品。

この映画は一応アクションものと分類できるのでしょうか。でも、コメディタッチの部分もあって、全編に張りつめた緊張感がみなぎっているというわけでもない(特にズッコケ若者三人組と借金取りの手下のおっちゃん二人組の存在が息抜きになっている)。
ボクの印象としては、結局どっちも付かずで散漫になってしまったような気がします。チョンドヨンのアクションへの体当たり演技は認めるが、この映画で彼女の持つ魅力が全開しているとは、残念ながらちょっと思えない。コメディならコメディで押しまくれば良かったのに。

当然ながら登場人物とセリフが多く、理解できなかった部分も多いが、映画が進んでいくと徐々に輪郭がはっきりしてくる。
チョンドヨンは元ラウンドガール(ボクシングの試合で次のラウンドを示す数字が入ったボードをもってリングに上がる女性のことです)。
女性タクシー運転手はここ数年で珍しくなくなった(日本ではそうだけど、韓国ではどうなんだろう?)。もう一人の主人公は女タクシー運転手(イヘヨン)。
この二人が運転するクルマが出会い頭に激しく衝突するところからこのお話しは始まる。

チョンドヨンは芸能界入りを夢見ていたが、目の下に出来た傷がもとで夢破れ、今は元ボクサーのチンピラの情婦だ。チンピラは街の顔役から賭け闘犬の運営を任せられている。この闘犬場は廃船の中にあり凄い迫力だ。
一方、女運転手は何かの事情で夫と子供と別れ、アパートで一人暮らし。この侘びしい部屋にも借金取りが押し掛けてくる。映画の冒頭で彼女が恐ろしく気が強くケンカも強いことを観ている者に分からせる数シーンは、まだ訳が分からないうちだけにすごい迫力だ。

この事故がきっかけで二人は仲良くなり、今の生活に倦んだチョンドヨンと借金から逃れたい女運転手、双方の思惑が絡み、二人で計画したのが闘犬場からの現金強奪だ。
この作戦決行の日に闘犬場に警察の手入れが入ったことから大混乱に陥る。
現金が詰まった黒カバンを巡る争奪戦に、警察が加わり、そしてチョンドヨンの情夫であるチンピラに不信感を募らせていた顔役が現場に派遣していた彼のボディガード(こいつがやたらかっこいい!)、チンピラの手下。そしておこぼれを頂戴しようと割り込んできた闘犬場のボーイたち三人組、事情を知らずに姿をあらわした借金取りの手下。
彼等が繰り広げるカーチェイスとアクション(殴り合い)は壮絶。方や本物の札束が入ったカバン、方や新聞紙で作ったフェイクの札束が入ったカバン。一難去ってまた一難。最後にこのカバンを手にするのは...?

言葉が分からないと、筋を追うのに必死になって考える。日本の映画館ではここまで頭を使って映画を観ることはない。当然、細かい言葉のアヤや伏線は分からないから、印象は極めて大雑把なものになってしまう。
もし、セリフがもっと理解できたら凄く楽しめる娯楽大作なのかもしれません。なにしろ、超豪華な出演陣と、見るからにお金がかかったセットとアクションシーンの連続なんですから(でも、意外とそれらをまとめられなくて空回りしてたりして...)。
ちゃんと日本語の字幕で楽しみたい。そんな作品です。日本での公開を待ちましょう。

でも、せっかくチョンドヨンが出ているのにサングラスばかりなのは残念だ!

おしまい。