「公共の敵/Public Enemy」

ソルギョングが魅せる


  

「悪い男/Bud Guy」を観るために劇場に駆け込んだ時にはあせっていて気が付かなかったけれど、このコア・アート・ホールでも「公共の敵」を上映していることに、ビルを出てタバコを飲んでいるときに気が付いた。
チケット売場で上映時間を確認すると間もなく上映時間だ。何というラッキー。素早くチケットを買う。おいおい、おねえちゃん。内職で刺繍をしている場合とちゃうやろ。「おまえ。また観るのか?」って、ほっといてくれ!
「悪い男/Bud Guy」を上映した劇場より大きいけど、入りは30名ほどとちょっと淋しい(でも、終映後、ロビーに出たら多くの人が待っていました)。

「ペパーミント・キャンディー」でボクを魅了したソルギョング、そしてイソンジェは「美術館の隣の動物園」でシムウナさまと共演し「アタック・ザ・ガスステーション」でも主演していましたね。とっても豪華な主演の二人。
ソルギョングは決して二枚目ではないし、スマートでもない。泥臭い人なんだけど存在感がある俳優さんですね。
イソンジェは今までボクが知っているイソンジェから大きくイメージチェンジして、ダーティな今回の役を見事に演じ切っています。
班長役には韓国映画でよく見るおじさん。署長役には「チング」で狂言回しの役で出ていた人が演じています。そして内部調査官の役で唯一笑いを取る役にもよく見る顔(名前は不詳)が出ています。韓国の俳優さんは主役級のスター以外はなかなか名前を覚えられません!

ソルギョングは刑事。と言っても決してラツ腕のデカではなく、駄目な刑事。算数もろくすっぽ出来ない。そんな彼が警察という組織から見放されて孤立無援の状態になりながら犯人を追いつめていく。
最初はこのダメ刑事がタイトルの「公共の敵」なのかと思っていたら、やがてそうではにことが分かる。
本当の「公共の敵」はイソンジェ。普段は大企業の若き重役で、何不自由ない、いや随分恵まれた生活を送っている。しかし、お金を巡って両親を惨殺し、クルマの接触事故がもとでタクシーの運転手を殴り殺す。レストランでのちょっとしたいさかいが原因で善良なおやじを家にまで押し掛けて刺し殺す。そんな男のことだったのだ。

ソルギョングは姿をあらわすだけで画面が締まる。そして何をするんだろうかと期待を抱かずにはおられない。
露店で果物を売る若者をからかい、小銭を巻き上げる。息のかかったチンピラを締め上げて捜査に協力させる(締め上げられるタコオヤジとナイフ遣いの男、なかなかイイ味出してます)。いい奴なんだか悪い奴なんだか...。とても仕事熱心には見えないしね。彼のデスクの引き出しにはボールペンが1本転がっているだけだ。

ストーリーそのものにはそう新鮮味は感じられない。はみだし刑事が活躍し事件を解決するのは、日本の映画やテレビドラマでも使い古されたお話しだ。でもこの映画が韓国でヒットしてロングランしているのは、結局、ソルギョングの鉄拳がこの「公共の敵」を倒すところにあるのでしょう。組織からも法からも見放された(そうでもないけど)ソルギョングが最後には腕力で事件を解決(?)してしまう、そんなところにソウルの皆さんもスッキリ溜飲を降ろしたんでしょうね。

日本でも公開の可能性は大いにあります。 この映画は台詞も多くて、ボクはストーリーを追うので精一杯。ギャグでお客さんが沸いてもボクだけ一人蚊帳の外。淋しい。
しっかりした字幕付きで是非もう一度観たいですね。

おしまい。