「いますぐ抱きしめたい」

若さがはじける!


  

東京の大森にいつも香港映画を上映している映画館がある。大森駅の南側に出てバスターミナルを挟んで、西友が入っているビルの5階に、まるで場違いな雰囲気である「キネカ大森」。小さな劇場だけどスクリーンは3つありなかなか「濃い」。今回はボクがまだ観ていなかった「いますぐ抱きしめたい」をレイトショーで上映していた。

今や巨匠の域に達した感すらあるウォン・カーウァイ監督の長編デビュー作。1988年の制作。主演はアンディ・ラウとマギー・チャン、そしてジャッキー・チュン。10数年前の作品だけあって三人ともさすがに若い。若いだけではなく、青くて垢抜けない。そして今よりもふっくらしているのが妙に印象的だ。ジャッキー・チュンはなぜかジュビロのゴン中山に似ている(チャウ・シンチーも中山に似ているけどね)。アンデ・ラウは若き日の宍戸錠のようだし、マギー・チャンは若尾文子を思わせる(たとえが古いね)。三人ともフレッシュで瑞々しくて、ちょっと荒っぽいけど素敵な青春映画に仕上がっています。

ストーリーはまるで東映のやくざもののようです(このあいだ観たタイの映画「レイン」もそうだったけど)。
堅気の女の子(マギー・チャン)がふとしたきっかけでやくざ者(アンディ)と知り合う。最初は距離を置いていた二人だがいつしかは惹かれ合い、愛し合うようになる無鉄砲なアンディの舎弟(ジャッキー)が組織の鉄砲玉として死地に向かうことになったことを知ったアンディはマギーを島に残して救出に向かう。そんなアンディのポケベルが鳴る。伝言ダイアルには「待っているから、無事に帰って」とマギーの伝言が(時代の移り変わりを感じるねぇ!)。その伝言を胸にアンディは出かける...。

アンディ・ラウとマギー・チャンの全身から溢れ出るような活気というか、妖気にすっかりボクは酔ってしまいました。そして恥ずかしながら「こんな、ストレートな激しい恋を味わってみたい」とさえ思いました。
ふと、この映画が10数年前なら、今から10年後には、今売り出し中のニコラス・ツェーやイーキン・チェンそしてサム・リーやスー・チーも香港映画の大御所になっているのかなと思いました。どうだろう? この「いますぐ抱きしめたい」だって主演の3人以外はもう香港映画にも出てない人ばかりだもんなぁ。

すがすがしささえ感じてキネカ大森を後にしました。オススメの一本。もっとも次はどこでいつ上映されるのかは分からないけどね(ビデオもDVDも発売されています)。

レイトショーにもかかわらず、30名ほどの入りで盛況でした。濃そうなお客さんが多かったですね。
次回は韓国映画「情事/an affair」をご案内します。

おしまい。