「ムッシュ・カステラの恋」

フランスの大人の恋は...


  

去年の春先から月に一度は東京へ行くようになって、東京の印象が随分変わった。以前は東京という大都会をアタマから否定していたけど、今では魅力も感じるようになった。もちろんまだほんの‘さわり’にしか触れていないんだけどね。

で、今回観てきたのはフランス映画「ムッシュ・カステラの恋」。会場は銀座テアトルシネマ。大きな劇場ではないのですが、なかなか上品な大人のムードが漂い、高級感を感じさせる映画館です。女性が一人で来ている姿が目立ちました。ボクが普段観ている香港や韓国の映画のときにお会いする方々とは臭いが違うような気がしました。金曜の20:30からの回に70名ほどの入りとは立派ですね。

幾つものエピソードが同時進行していくちょっと分かりにくい映画。
全体を観ればコメディ映画なんだろうけど、単純に思いっきり笑える映画ではないのです。カステラという主人公を核にした群像劇ですね。
お話しの中心になるのは、やっぱりカステラの恋。彼はそう大きくもない会社のオーナー社長。部下に勧められて英語の家庭教師をつける。だが、カステラは全く英語に関心がない。彼のオフィスに尋ねてきた先生(クララ)をすげなく追い返してしまう。が、その夜、たまたま出掛けた劇場でその英語の先生が上演されていた芝居に出演している女優だとわかり、カステラは彼女に恋するのです。でも、良く分からないのが、最初はオフィスでクララになんの関心も持っていなかったカステラがどうして彼女が女優とわかった瞬間に恋してしまうのかということです。
そして分からないことと言えば、カステラとカステラ夫人の関係。カステラを警護するどこか影のある元刑事のボディガード、フランクと運転手のブリュノ。この二人とバーのウエイトレス、マニーの関係。カステラとクララの仲間の芸術家との交流...。
いろんな糸(意図?)が絡まり合ってこの映画が出来上がっている。その全てがなんか曖昧模糊としていて、何となくわかるんだけど、釈然としない部分も多い。そんな不思議な映画なのです。かと言って、訳が分からなくて不愉快になるというワケではないのです。

ボクにはカステラがキララの気を引くために一生懸命の姿、そして彼女につれなくされて落ち込む姿が好きです。
確かに「アメリ」とはひと味もふた味も違う、おとなの恋を描いているんですね(そして、ボクはカステラおじさんの恋の行方に共感してしまう...)。

次回は、イタリア映画「息子の部屋」をご紹介します。

おしまい。