「彼女を見ればわかること」

観終わって、誰かにすがりつきたくなる


  

心斎橋のパラダイスシネマで「ニューイヤーズデイ/約束の日」が終わったのが20時18分ごろ。20時40分開映の「彼女を見ればわかること」に間に合うかどうか、微妙なところ。四つ橋線の心斎橋まで急ぎ、来た地下鉄に駆け込む。大国町で御堂筋線に乗り換え。でも、向かいのホームになかなか列車が入って来ない。動物園前に着いたのが20時35分。なんとか間に合った。
シネフェスタに来るのは久しぶり。チケットを買い、3人しか座っていない劇場の椅子に座ると同時に開映を告げるブザーが鳴った。ここでも予告編が始まってから何人か入ってきて、10人ほどになった。ボク以外は全員女性だ。
ガーデンシネマで上映されていた時から気にはなっていたんだけど、この日まで観る機会に恵まれなかった。ここで再映されているのを知り、すぐに行こうと思ったんだけど、20時40分からというのがネックになって、とうとう終映最終日の前日に「滑り込み」だ。

静かな映画。 ドラマチックなことが起こるわけでもなく、喜劇でも、悲劇でもない。

L.A.に住む大人の女性5人のそれぞれを淡々と描いて、繋いでいく、そんなオムニバス・ムーヴィー。5人に共通しているのは、過去はともかく今はシングルであること。そしてある意味では不幸であり、でも経済的(社会的)には成功して、恵まれている、ということ。

どこにでも、誰にでも映画や小説に出てくるような劇的なストーリーがあるわけではなく、人生というのは淡々とした日々の積み重ねが綿々と連なっているだけなんだよ、と語りかけてくれているようです。(実際、そうなんだけど) 思い詰めて、人生最大級の決断をして胎堕の手術台に乗る。でも、手術を担当する医師にとっては仕事のひとコマであり、この手術そのもには何の感情も持ち合わせていない。むしろ感心が向いているのは、痴ほうが進んでいる母親のことであり、占い師に予言された新しい恋の予感なのだ。

結局、人間というのは、この世に生を受けて生まれてから死ぬまでのあいだ、恐ろしいほど孤独であり、淋しいものなんだな。そして生きている限り、心のどこかで、この淋しさを癒してくれる相手を求めているんだと教えてくれました。
その相手は配偶者であるとは限らず、恋人かもしれないし、友人だったり、兄弟(姉妹)や子供かもしれない、ひょっとしたら街ですれちがっただけの浮浪者のおばちゃんかもしれない。

決して劇的ではないけれど、自分の人生をふと振り返って、誰かにすがりついたり甘えたくなりそうな作品でした(家でビデオで見るよりも、薄暗い映画館で是非ご覧ください)。
占い師役で出ているキャリスタ・フロックハートがなかなかキュートで好ですよ。

おしまい。