「非・バランス」

こんな話があったらいいな


  

「こんなことあるはずない」って思いながら観ているんだけど、観ているうちに「ひょっとしたらあるかもしれないな」と思いはじめて、そしてとうとう「こんな話があったらいいな」と思ってしまう。

ボクはもちろん男だし、年齢もずいぶん上だ。それなのに、千秋の気持ちが痛いほど伝わってくる。

自分が傷つかない、裏切られないためには、千秋が考えた戦略、すなわち「クールに生きる、友達は作らない」はいい戦略だ。堅く閉ざされた千秋の心に攻めてくる敵はそう多くはないものね。心を閉ざしているがために失うものも多いかもしれないけれど、それは千秋をノックダウンするほどのダメージは残さない。
ダメージは残さないハズなんだけど、やっぱり、千秋の心はバランスを崩していく。それはホラー映画をビデオで見ることや万引きをしてしまうことだったり、未知の異性からの誘いに乗ってしまうことなんかに顕れていたのかな。
そして、ふと耳にした「緑のおばさん」のウワサ話しにすがりつきたくなったのかもしれないね。

こんな状態の千秋を「友人」として受け止めることが出来た菊ちゃんって凄い。ボクには出来ない。千秋の話を聞くことすら出来ないかもしれない。
菊ちゃんと千秋の間には、恋愛感情とか金銭や主従関係、血縁や地縁といったものが全く無くて、ドライで(時としてウエットだけど)ニュートラルなところがいいね、うらやましい。
こんな関係って、ともすればうわべだけになるか、恩着せがましくなりそうなものだけれど、そう感じさせないのが菊ちゃんの性格なんでしょう。

ヒトって、どんなきっかけで心のバランスを崩してしまう(崩されてしまう?)かわからない。中には自分一人で立ち直ってしまう強いヒトもいるでしょう。でも、ほとんどのヒトは自分の力だけでは、一度崩れてしまった心のバランスを取り戻すことは出来ないモノです。
そんな時に助けてくれたり、支えてくれたりするのは、友人や(家族を含めて)周囲の人たち。でも、助けてもらったり、支えてもらうには片意地張らずに自分の心のガードを下げないといけない。誰もが運良く緑のおばさんや菊ちゃんに出会えるとは限らないのだから。
でも、心のガードの下げ具合って難しいよね。

どんどん表情が変わっていく千秋に会いに、もう一度シネリーブルへ行ってきました。相変わらずお客さんは少なかったけどね。
二度目を観て、千秋にとって菊ちゃんは「天使」だったんだろうなぁ、って思いました。ボクも菊ちゃんのように自然体で人に接しないとアカンなぁとちょっぴり(大いに?)反省しました。
ホントの自分を晒さないとなかなかホントの人間関係って出来ませんよね。
この映画、ほんとは夏休みに公開して、多くの中学生や高校生に観てもらいたかったな。

この春に、20数年ぶりに出張で仙台に行きました。ほんの短い滞在だったのですが、それでもこの映画を観ていると親近感が沸くから不思議ですね。
残念ながら「非・バランス」の大阪での上映は終了してしまいました。何かの映画祭で上映されるのを待つか、テレビでの放映かビデオ(DVD?)化をお待ち下さい(でも、モニターで見るのと、大きいスクリーンで観るのとはだいぶ違うけどね)。どんな形ででもいいから、一度観てもらいたいです。

次回は、韓国の問題作「嘘」か、香港のインディーズ「天上の恋歌」、それとも「ベンゴ」のしようか...。
毎日暑いけど、7月は暑くて当たり前、ガンバっていきましょう!

おしまい。