「白蘭」

こんな形の「恋」もあるのか


  

日本ではレスリー・チャンと常磐貴子が主演した「もう一度逢いたくて」という映画があったけど、韓国でもそういうノリに近い映画が公開中。タイトルは「白蘭(バイラン)」。
主演はチェ・ミンシクとセシリア・チャン。私でも、二人とも知っている大スターです。チェ・ミンシクはあの「シュリ」で、シュリの上司役をしていた人だから、そう言えば「あの人か」と思い出す方もいるかもしれません(いないか)。
会場は「団結社」。団結社というのが、劇場の名前です。場所はソウル劇場のすぐ近くで、改装中のピカデリー劇場とは通りを挟んで向かい合わせになっています。ここは朝鮮半島で初めて映画を上映した劇場だと聞いています。さすがに歴史を感じさせる重厚な造りになっています。

「チング」と違って、そんなに人気がないので上映時間の少し前に行っても楽々切符が買えました。2階席と併せると800名は入れる会場にわずか50名ほどの入りとは、ちと淋しい。でも、昨日は祝日、今日は平日の14:00の回だから較べたらかわいそうかもしれませんね。

割と単純なストーリーなので、だいたい理解できました。

物語の舞台は仁川(インチョン)。この4月に新しい国際空港がオープンした海辺の港町ですね。この街に住む冴えないチンピラがチェ・ミンシク。一応はレンタルビデオ店の主人だが、毎日街をブラブラしているだけだ。
この街に船で中国からやって来たのが白蘭(セシリア・チャン)。中国で両親を亡くし、唯一の身寄りである叔母さんを訪ねて来たのだ。しかし、訪ねた先に既に叔母は居らず、仁川で途方に暮れていた。
そこで彼女が目にしたのは職業斡旋所。ここで相談した彼女は、自分のビザでは長く韓国に留まれないのを知らされる。中国に身寄りのないセシリアは中国に帰っても仕方がない。韓国に長期滞在するためには韓国人の男性と「偽装結婚」するしかない、と教えられる。
その「偽装結婚」の相手に選ばれたのがチェ・ミンシク。セシリアには彼からだと言って、チェの子分(?)から赤いスカーフが渡される。彼女が受け取った婚姻届にはそのスカーフを巻いたチェの写真が添えられていた。

セシリアは仁川から遠く離れた街(すいません、どこかは分かりませんでした)に連れて行かれ、最初はナイトクラブで面接を受けるのだが、自ら口の中を噛み切って血を吐き、病気の振りをする。驚いたチェの子分とクラブのオーナーは、水商売をさせるのを諦め、町外れにある洗濯屋に彼女を預ける。 途方に暮れていたセシリアだが、ここでの仕事と暮らしにも慣れ、洗濯屋のアジマからハングルを教えて貰うようになる。
淋しい毎日だが、時折思い出すのが、まだ一度も会ったことが無く、小さな写真でしか見たことがないチェのことだ。彼女はその写真を額に入れ、机の上に置く。いつしか、セシリアは「結婚してくれたやさしい」チェに淡い恋心を抱いていく。

一方、チェは仁川で自堕落な暮らしを続け、殺人事件に巻き込まれてしまう。ヤクザの親分が抗争相手を殺したところに居合わせてしまったのだ。
チェは口封じにお金を受け取る。その代わり、何かあったときに親分の言うことを聞くという約束をさせられる。

セシリアはある日、今度はホントに吐血してしまう。そして、自分が病に侵されているのを知る。思い切って、仁川にチェ・ミンシクを訪ねて行く。ビデオ店の前でウィンドウ越しに店番をしているチェの姿を見ていると、突然、警察の車が数台やって来て、チェはそのまま連行されてしまう(どうしてなのかは不明)。

それからしばらくして、チェのもとにセシリアが死んだので遺体を引き取りに来るようにという連絡が届く。
偽装結婚を手配した子分と一緒に汽車に乗ってセシリアの元に急ぐチェ。汽車の中で、セシリアがチェに寄せた手紙を受け取り、セシリアの純情な思いにチェは心を打たれる。
セシリアの遺骨を抱いたチェは、彼女が住んでいた洗濯屋を訪ねる。そこのアジマから彼女の部屋に案内され、一度も会ったことがないセシリアに思いを馳せる。アジマから彼女が入院中に書いて、投函されることがなかったチェ宛の手紙を渡されるのだ。

仁川に帰ったチェはヤクザの親分に会い、故郷に帰って一から出直したい、従って以前交わした約束はもう果たせない、と伝える。セシリアの手紙に心を打たれたチェは、人生をやり直してみようと決意したのだ。
しかし、チェの口から殺人事件の真相が漏れるのを恐れた親分は、手下にチェの抹殺を指示する。
部屋で荷造りをしているチェはセシリアが写っているビデオテープを見つけ、海岸で恥ずかしそうにフェイ・ウォンの歌を唄う彼女の姿を眺める。その時、チェは部屋に入り込んできた暴漢に首を締められて...。

なんか、悲しい結末を迎えるんだけど、あんまりしゃべるシーンがないセシリア・チャンが薄幸な女性を好演しているし、だらしないチンピラをチェ・ミンシクが上手く演じています。
セリフが100%理解できれば、もっとお涙頂戴的な映画ということが判るのでしょうが、「だいたいこんな感じとちゃうかなぁ」と推測しながら観ているので、あんまり深く感情移入できませんでした。
もちろん、字幕付きでもう一度観てみたい作品です。

こんな形の恋もあるねんなぁ、と考えさせられました。

おしまい。

※追記※
その後の調査(?)によると、この「白蘭」の原作は浅田次郎氏の短編小説で、99年にチェ・ミンシクの役を中井貴一が演じて「ラブ・レター」というタイトルで映画化されていたようです。ボクはいかにも韓国人が好きそうな題材を扱ったストーリーやなぁ、と思っていただけに、とても意外な原作の存在に正直言ってびっくりしてしまいました。