「宗家の三姉妹」

中国の近代史をおさらい


  

名作なんだけど、チャンスを一回逃すとその後もずるずるとスクリーンでお目にかかれない映画ってありますよね。ボクにとってそんな作品のひとつがこの日ようやく巡り会えた「宗家の三姉妹」。「玻璃(ガラス)の城」のメイベル・チャン監督、マギー・チャン、ミッシェル・ヨーなどが出ています。

そうか、中国は清の時代は共産主義ではなく資本主義(?、少なくとも自由主義)だったのね。20世紀前半の激動の時代を生き抜いた三姉妹のお話。長女は世界一の実業家に嫁ぎ、次女は中華人民共和国(今のいわゆる中国ね)の建国の父・孫文と結婚。三女は中華民国(今のいわゆる台湾)の総統・蒋介石の夫人となる。この三姉妹のスケールはとてつもなく大きい。

すでに財をなし、祖国の清王朝からの解放、革命を支持し、上海に居を構えるチャーリー・宗が父親。三姉妹は幼い頃からアメリカに留学。そしてそれぞれの伴侶を得るわけだけど、それぞれが時代の、世界の荒波に呑まれて、いがみ合い、でもかばいあい生きていく。
この映画を観ていると、中国という国の近代史が一気に理解できます。清王朝を打倒して国民党による中華民国の建国、国民党の仲間割れ、軍閥の跋扈や日本帝国からの侵略、国共合作、日中戦争そして中華人民共和国の建国、国民党の台湾脱出、東西冷戦の始まりとわずか2時間半ほどの映画の中に全てがぎっしりと詰まっています。
しかし、一家の三姉妹がこれほどまでに、歴史に、国にそして世界に関わるってことがあるんだろうか。不思議なものです。
マギー・チャンは「花様年華」のときよりも、こんかいのようなちょっとおきゃんな女の子の役の方が輝いているようにも見えますが、そんなふうに思えるのは、制作年度を考えると彼女はとても素敵に年を取っている証明なんでしょうかね。

晩年は、洋の東西に別れてしまって、もう姉妹が揃って顔を合わせることがなかったというのは淋しいですね。

この作品は今後もいろんなところで上映されるでしょうから、東洋史に興味があってもなくてもご覧になってソンはない映画だと思います。

おしまい。