「山の郵便配達」

しみじみ心に響く佳作、中国へ旅に出たくなる


  

中国大陸へ旅に出たくなる映画を観た。

静かに、淡々と流れる映画。テーマは「父と子」「家族」そして「僻地での郵便配達」の三つだと思うんだけど、それらのテーマよりも圧倒されるのは中国湖南地方の自然の美しさ。緑の山があり、谷があり、川が流れ、田と畑がありそして集落がある。そのどれもが心に響くように美しい。
今まで観た中国の映画では、人工的なモノこそ美しく、自然そのものは「美しいもの」ではなく、そのままの自然は「貧困」とか「未開」というイメージの象徴であり、自然の美しさはどちらかというと「背景」で「主役」ではなかったんだけど、この映画のもう一人の主役は、間違いなく湖南地方の美しい自然です。

郵便配達員の父は、もう何十年も一行程二泊三日(三泊四日?)の配達をしていた。配達先に山が険しくクルマが通れる道が通じていないので、歩いて集落をまわり、郵便を配達し、また集めてくるのだ。当然、郵便物は自分で背負っていく。
そして、この日は自分がしてきたこの仕事を息子に引き継ぐ最後の配達に出掛ける日だ。
息子は、いつも家を留守にしている父親に対して一度も「お父さん」と呼んだことがない。自分は父親から嫌われていると思い込んでいたのだ。
この郵便配達の旅には「次男坊」と名付けられた一匹のシェパードも同行する。彼がとてもいいアクセントになっている(中国では、庶民が犬を飼うことはとても珍しいことなのですよ)。
息子は、この父親の最後の旅を一緒に歩いて、二人はあんまりしゃべらないんだけどいろんなことに気付く。

劇的な出来事があるわけではなく、演出も押さえらていてるんだけどじーんと心に染み込む佳作です。是非、一度ご覧下さい。中国に行きたくなりますよ。
大阪ではゴールデンウィーク頃に梅田のOS・CAPで公開予定。
私は勝手ながら出張中に東京の岩波ホールで観てきました。そんなに観やすいホールではない(どちらかというと観にくい、でも映画専用の劇場じゃないしね)けれど、平日の最終回で100人程度の入りは立派です。

おしまい。