「春香伝」

いいものはいい、韓国古典のラブストリー


  

いい映画を観た。

胸が透くようで、それでいて目からは涙がぼろぼろこぼれる(恥ずかしながら)。ストーリーがいいのももちろんだけど、恐らく忠実に再現されたのであろう時代考証。衣装、街並み、そしてなんと言っても、あたかもパンソリを聞きながら映画を観ているような構成、音楽の良さ。どれをとっても「いい」。
ボクが古典的なラブストーリーが好きなせいもあるだろうけど、最後はこうなってハッピーエンドだろうなって判っていても、ついついクライマックスには涙してしまう。

この「春香伝」は、日本で言うと「忠臣蔵」かな、誰でも知っている古典的娯楽作品という意味で。それに、ロミオとジュリエットや水戸黄門を足して割ったようなストーリー。身分の違う二人の悲恋の物語から、最後は、絵に描いたような勧善懲悪(そのへんが黄門さま)。
演じている役者さん達の表情がいいね。若い二人しか目に入らないんだけど、この二人の初々しさが「好(ハオ)」ですね。
それに春香が着ている衣装も素晴らしい。娘時代はの初々しい色使いで、中盤以降は紺や小豆色の大人しくて渋めの韓服に変わっていく。それが春香の強い意志の現れだったような気がするけど、それは深読みしすぎかな。

「私は死んだら、蝶になる。お前が死んだら花になれ」
「いやです、花はいつか枯れるもの、枯れた花には蝶は来ません」

というようなパンソリの唄いにのせられて、物語は進んでいく。その調べは、浪曲のようにも聞こえる。中盤以降は聴いている観客も身を乗り出して、合いの手を入れるし、涙したり、踊りだしたり。劇場でパンソリを聴いているお客さんが、頭の中で描いているであろう光景を、私たちがスクリーンに映し出されている映画として観る。パンソリは、唄い手と合いの手を入れる太鼓を打つ人と二人だけで織りなす韓国の伝統芸能。このシンプルさがいい。

素直な気持ちで観て、映画が終わったあとに「あぁ、ええ映画観たな」って素直に感動できるオススメの一本です。

4月の7日に封切りされたばかりなので、あと2週間は上映していると思います。会場はLoft地下のテアトル梅田。ボクは初日の1回目に行ったのですが、50名程度の入りとまずまず。但し、ちびっと年齢層が高かったように思います。
パンソリについて知りたければ「風の丘を越えて〜西便制」も併せてご覧頂くと、なお良いかと思います。この「春香伝」と同じ監督の作品です。ビデオも出ていますのでレンタルできるはずです。この「風の丘を越えて」の中で主人公が「春香伝」の練習をしています。

おしまい。