「少年義勇兵」

地味だけど見応えがある


  

気が付けば、街はすっかりクリスマスモードに突入していています。
日中はずっと商店街やらショッピングセンターにいるもんだから、体中にクリスマスソングが染みついています。もう、頭の中がぐちゃぐちゃ。
とうとう先週は映画館へ足を運ばなかった。こんなこともあるもんです。

さて、今回観てきたのはタイの映画。今年、タイの映画も随分拝見しました。この国の映画も小規模ながら関西で観られるようになって嬉しい限りです。言葉の雰囲気はベトナム語や広東語に似ているような気がします。映画を観ているだけでは一言も理解できないけどね。
会場は心斎橋のパラダイスシネマ。月曜の最終回、しかも地味な作品。ちょっと心配やったけど、その通り。ボクを含めてたった4人のお客さんでした。

この映画は実話をベースにしたフィクション。
1941年の太平洋戦争前夜。タイは大戦の風雲に巻き込まれまいとして中立を宣言していた。そのタイに祖国の独立を守るために組織されていたのが「少年義勇団」。
舞台はタイの海岸地帯にある街・チュンポーン。この街のにある男子学校(ここは中学のような気もするし、高校のようでもあるし...)の学生で構成されている少年義勇兵の物語り。
戦争映画でもあるがその前に青春ドラマであり、人間ドラマでもある。そしてタイの独立がいかにして守られたのかを知る近代史の物語りでもある。この映画を観たタイの人たちは胸を熱くしたんだろうなぁ。ボクだって熱くなったもの!

主人公のマールットを取り巻く仲間達が義勇兵を通じて成長する姿が等身大で描かれている。
義勇兵の募集に始まり、厳しい訓練が行われる。訓練を通じて兵士とは何か、戦争とは何かを彼等は学んでいく(しかし、やがてそれは訓練であり、本当の戦争とは違うことが実戦で彼等にも分かる)。義勇兵を指揮する将校や、実務にあたる兵士たちも人間くさく描かれていて好感が持てました。
訓練期間中は、訓練よりも彼等が直面している淡い恋のエピソードや、自分の家が抱える問題などが上手く挿入されてほのぼのムードだ。
後半の日本軍との交戦シーンから緊迫感は一気に高まる。本物の兵士(!)がいないなか、わずか数ヶ月の訓練と貧弱な装備の義勇兵たちを出動させていいのか!
この戦いで知る、訓練ではないほんものの戦争。そして隣り合わせにある「死」との対面。

戦争映画なのに最後には爽やかさすら感じられる、なかなかの佳作でした。今週の金曜までパラダイスシネマで公開中です。

おしまい。