「純愛譜−じゅんあいふ−」

ソウルのオタクと東京の自殺願望者


  

どうして「純愛譜」というタイトルがつけられたのか良く分からない。
少なくとも純愛ものではないので、同じ韓国の映画でも「イルマーレ」や「リメンバー・ミー」のような映画だと思ったら間違いだ。
2000年に作られた韓日合作の作品。監督はイ・ジェヨン、およそ半分は日本でもロケして、日本語のセリフで撮られている。出演はシム・ウナ様の「Interview(インタビュー)」(間もなく大阪でも公開!)や「イルマーレ」に主演していたイ・ジョンジェ、日本側は橘実里という新人の女の子。

この映画の凄いところは、男臭くてカッコイイ、二枚目路線のイ・ジョンジェが情けないオタク風の青年を演じているところだ。彼は区役所の出張所のような所に勤める公務員。この出張所が凄い、管理職以外は皆まったくヤル気がなく、ひたすら9時から5時までダラダラ時間を過ごしているだけだ。中にはデスクに突っ伏して眠っているモノもいる。もちろんウイン(イ・ジョンジェ)もその一員。こんな職場と毎日に彼は嫌気がさしている。ヤル気もまったくない。併設されている文化教室で助手をしている女の子に好意を持っているが、彼女には全く相手にされない。
全く冴えないウインが唯一のハケ口にしているのは、夜な夜なインターネットでエロサイトを覗くことだ。ある日、新しいサイトを覗いたウインは、そのサイトに住んでいる日本人の少女「朝子」に恋をする。

この朝子がもう一人の主人公。東京に住む彩(橘実里)は予備校生。彼女がどうして死にたいと思うようになったのか全く理解できないが、「日付変更線の上で死ぬ」という願いを持っている。予備校を辞め、アラスカへ行く飛行機代を貯めるためにアルバイトを始める。彼女の家庭が面白い。最近よく見かける大杉漣が父親だ。登場シーンは少ないが存在感があるねぇ(役上では影の薄いオヤジなんだけど...)。
最初のバイト先はスポーツジム。そしてもっと実入りのいいアルバイトが、サイト上にある架空の部屋に住む少女を演じるモデル。ほんまに怪しいバイトやで。東京で撮影された画像はアラスカ(!)に送られ加工されるという。彩のサイト上の名前は「靴を履いた朝子」。彼女の姿を見て、世界中にいる淋しい男たちの心が癒されるという。

こんな二人がアラスカの空港で出逢うまでを、ソウルと東京での二人の姿を追いながら進んでいく。二人のそれぞれの日常が丁寧に描かれている割には、妙に生活感がない。だからなのか、観ている側は主人公に感情移入できない。
本来なら二人が出逢ってからが最大のヤマ場だと思うんだけど、「これから」って言うときに映画は終わってしまう。なんか締まらないなぁ。

動物園前のシネフェスタで、11/3が初日で公開中。ボクのような韓国映画は取り敢えず観るという人か、イ・ジョンジェや新人・橘実里が大好きという人以外はあんまり観てもしゃーない作品かもね。
日曜の午前中という時間帯のせいか20名弱の入りでした。お土産に「ビビンバの素」をもらいました。ありがとう。

おしまい。