「紅いコーリャン」

紅、紅、紅


  

この金曜の夜に行ってきたのは「中国映画セレクション」というタイトルで特集上映されている天六(天神橋筋六丁目)にある「ホクテン座」。初めて行く劇場。80名定員で、30〜40名ほどの入りだったからそこそこですね。

「初恋のきた道」で子が親のことを語ったように、この「紅いコーリャン」(1987年制作)では孫が祖父母のことを語っている。

「紅」が鮮烈だ。 物語りは、二つのパートに別れている。

最初のストーリーは、人里離れた荒野にポツンと建つ造り酒屋に娘(九児/若き日のコン・リー)が嫁ぐシーンから始まる。娘を載せた輿が野を越え、山を越え、そして広大な見渡す限り広がる野性のコーリャン畑を越え運ばれていく。
彼女が乗る輿は、全て紅い布で覆われている。九児も上から下まで紅い服を着て、頭の上からは紅い布を被せられている。履いているクツまで紅だ。
九児はこの結婚が気に入らない。花婿は確かに金持ちだがハンセン病を患い、長く嫁の来手がなかったと言う。父親はそんなことより、結納替わりにもらった一頭のラバにすっかり目が眩んでいる。
九児は花婿を拒み続ける。そして、婚礼から三日目。当時の習わしで、実家へ里帰りをする。その途中、広い広いコーリャン畑で、嫁入りの時輿を担ぐために雇われた男と結ばれてしまう。

そして二つ目のストーリーは、抗日の話しだ。九児は急死した主人の跡を継ぎ、酒造業は一層の繁盛をしていた。コーリャン畑で結ばれた男との間に男の子をもうけ、今は腕白盛り。そんなところへ土足で踏み込んできたのが、日本軍の兵士たちだ。
婚礼のための紅は、いつしか鮮血の紅へと変わっていく。
後半のパートに出てくるエピソードは、本当にあったことなのかどうか判らない。誇張されているのかもしれないし、逆にこれでもセーブされているのかもしれない。観ている側にとっては正視に耐えない。中国大陸や朝鮮半島で過去日本人が行った行為に対してきちんと反省しないとダメですね。

酒屋の番頭さんは、どこかで見たことがあると思っていたら思い出しました。「山の郵便配達」で主演のお父さんです。この人、渋くて味のある役者さんですね。あと、人足で後に酒屋の主人になる人を演じているのは、確か「こころの湯」で阿明(アミン)役の人のお兄さんだったのではないかな(間違っていたらごめんなさい)。
この映画でデビューしたコン・リーが、後に大女優になったことで、同じくチャン・イーモウ監督に見いだされて「初恋のきた道」でデビューしたチャン・ツィイーがコン・リーと比較されるのもうなずけます。チャン・ツィイーの方が洗練された都会的な感じがするけどね。

ちょっと衝撃的な映画ですが(どう「衝撃的」なのかは書けていませんが...)、チャンスがあれば是非ご覧下さい。残念ながら天六での上映は終了してしまいました。

おしまい。