「パズル」

俳優はみんないいんだけど、お話が盛り上がらない


  

巨人の投手、槙原が引退した。プロ野球にはさほど興味は無いが、槙原にはちょっとした想い出がある。
学生時代の夏休み2カ月間だけ北海道日高の牧場でアルバイトをしたことがある。この牧場に、顔つきが槙原そっくりの2歳(今の数え方なら1歳)の牝馬がいた。2歳馬は競馬場へ行く前の大切な商品(預かりモノ)だから、朝放牧に出す前と夕方放牧から帰ってきてからの1日2回入念にブラッシングをする。マキハラはボクが担当した2歳馬のうちの1頭だった。
彼女は芦毛で、とってもおとなしかった。だから、新米のボクでも安心してブラッシングが出来たんだけど、ひとつだけ妙なクセを持っていた。ボクが前屈みになって彼女の腹や前足にブラシをかけていると、首を器用に曲げて、ひょいっと帽子をくわえて取ってしまうんだ。ボクが頭を上げてにらみつけると、マキハラは帽子をくわえながら嬉しそうに笑う。その表情が槙原投手にそっくりなんだ。
彼女はボクが牧場を去った後の秋のセリ市で買い手が付き(転売されて)山形県の上ノ山競馬場で競走馬になった。どんな名前が付いて、デビューできたのか、そしてどんな成績だったのか、その後の消息は全く知らない。でも、生きていれば17歳のおばあさんだ。きっと今も北海道のどこかの牧場で、真っ白な馬体になって、牧夫の帽子を取り上げて喜んでいるんだろうな...。
そんなことを想い出していました。

さて、今回ご紹介するのはスペインの映画「パズル」。
登場人物のルックスがいい。主人公のシモン(エドゥアルド・ノリエガ)もそうだし(かなり、男前!)、シモンのガールフレンドアリを演じたパス・ベガ、新聞記者のマリア(ナタリア・ベルベケ)もなかなか魅力的だ。スペインはタレントの宝庫だね。この中の誰かが、ペネロペ・クルスみたいにブレイクするかな。
そんな魅力的な面々が揃っているのに、お話の方はイマイチ盛り上がらない。それが残念。

舞台はスペインのセビリア。この街の新聞に載るクロスワードパズルの作家が主人公。小説家志望だ。キリストの復活を祝う「聖週間」を直前に控え、身の回りに奇妙な事件が起き、やがて死者さえも出る。それらは犯人が仕掛けたゲーム。シモンも「選ばれし者」として、知らず知らずのうちにこのゲームに参加させられてゆくのだ...。
ちょっと猟奇的な題材を扱った映画なのに、まっとうな作り方をしてしまったのが致命的。もっとホラー映画やSF映画のような作りにしたほうが良かったのではないかな。荒唐無稽な犯人の狙いや意図が観ているボクにはさっぱり理解できなかった。この犯人に単独で立ち向かうシモンも良く分からない。
唯一、恋人のアリと新しく目の前に現れたマリアの間で揺れ動く主人公の気持ちの描写だけが良かったね。ボクだってこんなかわいこちゃん(表現が古いね)二人に挟まれたら、どちらを選ぶか迷うよ。

クロスワードパズル作家という職業があるのも意外だったけど、それよりもクロスワードパズル制作用のソフトの存在がちょっとした驚きでした。このソフトが有ればボクにもパズルが簡単に作れそうだ。
スペインの映画にも、ハズレとは言わないまでも、あまり面白くない映画もあるんだと、ホッとしました。Loft地下のテアトル梅田で金曜まで上映中。平日の最終回を観に行きましたが、ボクを含めて10名とかなりシラけた入りでした。

おしまい。