「キャラバン」

ヒマラヤの自然に圧倒される!


  

ちょっと、配信が前後しましたが、気になって仕方なかった「キャラバン」を観てきました。会場は新梅田シティの「梅田ガーデンシネマ」(ここの売上にはだいぶ貢献してるなぁ)。平日の最終回でしたが立ち見が出る大盛況。イイ感じです。でも「バトル・ロワイヤル」の女子高生よりもタチが悪い。映画館はテレビの前とちゃうねんから「いちいち感想を声に出さんと静かに黙って観てくれ!」特におばちゃん、ええ加減にしてくれ!

圧倒的な自然を前にすると人間の営みはほんとにちっぽけなもんやねんなぁ、そんなことを思わす作品。舞台はネパール奥地の寒村。この村には農耕地が少なく、ヒマラヤを越えて行う交易(キャラバン)で麦を得て暮らしている。この村は老人と子供を留守番に残して、男も女もこのキャラバンに参加し、ヤクたちと共に何度となく山々を越えているのだ。そしてこのキャラバンを率いていくのが「頭領」だ。
ある日、キャラバンが山を越え村に戻ってきた、しかし若き頭領の姿がない。彼は道を誤り死んでしまったのだ。死んだ頭領の父親はかつてカリスマ性を持った頭領として永年キャラバンを率いていたティンレ。悲しみに暮れる彼は息子に代わってキャラバンを率いて村の戻った若者カルマが、息子を殺したのだと思いこむ。
やがて、次のキャラバンが村を発つ時が迫ってきた。村の若者たちから人望の厚いカルマが当然次の頭領として選ばれるはずだったが、長老の一人ティンレは首を縦に振らない。
ティンレとカルマの個人的な反目と、カルマの若い合理的な考え方と長老たちの何でも伝統や占いに頼るしきたりのぶつかり合い。とうとう今回のキャラバンはカルマ派とティンレ派に別れて出発することになってしまう。

人々の生活の姿も興味深いし、村に深く根付いているチベット仏教が新鮮に思えます(クンドゥン以来だねぇ)。それよりも、カメラは占いによって最良の日とされた日に旅立つティンレたちを追って行くんだけど、ヒマラヤの5,000メートルを越える峠を目指す彼らの前に立ちはだかる自然の深いこと、濃いこと。さすが「世界の屋根」。いつ果てるともわからない瓦礫の道、草原そして、断崖絶壁に付けられた細い道。
4日前に出発したカルマたちに追いつくためにティンレが選んだ道は「悪魔が住む」という崖沿いの険しい道。切り立った岩の中腹に刻まれたこの道は、人一人が通るのが精一杯。先を行くティンレが目にしたのは崩れて通れなくなった道。ヤクは前には進めるが後下がりは出来ない。ヤクが身を翻す場所もない。右手は絶壁、左手の眼下50メートルには目の覚めるような青い水をたたえる湖。

息を飲むような美しく、厳しい自然。そこに挑む人間たちのちっぽけな対立。やがて、人間達は力を合わせて、お互いを尊重し合うようになる。体力的に厳しい長老達のがんばりと、若者達が伝統の重さに気が付いたときに「和解」が生まれ、物語は結末を迎える。

舞台がネパールでなくても、世界中のどこにでもあるような世代間の対立を描いた作品。しかし、物語のバックにヒマラヤがあるからこそ呼び起こす感動がこの映画にはあります。映像が何とも言えず素晴らしい。ヒマラヤの濃い自然に触れたい方は是非ご覧下さい。ワタクシオススメの一本です。
今回初めてキャラバンに参加したティンレの孫が今まで一度も本物の「木」を見たことが無く、今回のキャラバンの目的地で初めて見る「木」を不思議そうに見上げているシーンも印象に残りました。

ヒマラヤに較べたら、六甲なんか軽い軽いっととうとう1月は4週連続でぶらぶら山歩きに行ってしまいました。

おしまい。