「初恋のきた道」

チャン・ツィイーの笑顔に会いたい!


  

素直に感動できる映画を観た。

もともと涙腺が強い方ではないから、映画を観て涙ぐむことはあったけれど、今回のように、頬を伝うほどの涙を流したのは久しぶり(ちと、恥ずかしいですが)。小細工とか飾りは一切なし。ストレートの直球でぐいぐい押されて、あっけなく三球三振したようなものです。
映画のタイトルがいい。原題は「我的父親母親」、英題は「The Road Home」で、邦題は「初恋のきた道」。どうしてこの「初恋のきた道」が良いのかは映画を観ればわかります(「私の両親」とか「ふるさとの道」という邦題がつかなくて良かった)。

映画を観るまでは、この作品の魅力の全てはディ役を演じるチャン・ツィイーの笑顔だと思っていた。でも、今となっては彼女抜きにこの映画が成り立たないのも確かだけど、全てじゃない。ストーリーというか、お話そのものがとっても素敵で、感動的なのです(途中までは「これはチャン・ツィイーのプロモーション・フィルムか!」とさえ思ったけどね)。
とにかく、ディが一途。人は恋をすると、ここまで一途になれるのかとびっくりするぐらい。一途だから、他の人がどう思おうが、後先のことがどうなろうが少しも気にしていない。でも、自分の思いの丈を直接相手にぶつけてしまうほどのずうずうしさはなくて、観ていてすがすがしさを覚えるほどの恥じらいを持っているところが、またかわいい。私もこんなふうに人を好きになってみたいな、と思わせる作品です。

「これなら、直すより買った方が安いよ」
「お金はちゃんと払うから、直してやって」
「誰かの形見の茶碗かい?」
「いいえ、ある人が使ったんだよ。使った人が娘の心を持っていってしまったんだ、碗だけでも残しておいてやりたい」
「じゃあ、心をこめて直そう」

ルオ先生からもらった赤い髪留め、新築する学校の梁に巻く赤い布、ディがいつも巻いている赤いスカーフ、ルオ先生に誉められた赤い服。この映画には沢山の「赤」が出てきて、そのでれもが実に鮮烈。
ディは、走ったり、転んだり、はたを織ったり、料理を作ったり、井戸に水を汲みに行ったりとにかくいつも動いてる、じっとしていない。そのじっとしていないディがかわいいのです。年老いたディもじっとしていない。じっとしていないディが、夜なべをして、葬儀に使う布を織り、葬儀が終わってから息子と話すときも何か手仕事をしている。最後に自分の家から飛び出して学校まで走っていくディが感動的です。

「人って素敵だな」と思わせる感動の一作。男性も女性もディの笑顔に会いに行って下さい 。
大阪では、梅田のガーデンシネマ、心斎橋のシネマドゥで公開中です。今回観たのはガーデンシネマ。公開初日ということもあってか、立ち見も出る盛況でした。

今年もそろそろ終わりですね。泣いても笑ってもあと一週間。情報誌の締め切りが迫っていますが、頑張って乗り切りましょうね(私は“泣き”が入ってますが)。

おしまい。