「クリクリのいた夏」

1930年代の幸せにひたる


  

こないだまで「暑い、暑い」と言っていたのに、街では冬物のスーツ姿を見かけるようになりました。みなさんお元気ですか?季節の変わり目ですので、体調には気を付けましょうね。

この土曜日に六甲山の前衛「東お多福山」にたかお先生と一緒に行って来ました。600メートルそこそこなので「凄く」しんどかった訳ではありませんが、それなりにしんどくて、この秋は何回もヤマへ行っているのに「いっこも体力付いてへんなぁ」と少し、がっかり。独りで歩いているときは、自分のペースで何回も何回も小休止を入れてしまうので、たまにはヤマのベテラン(たかお先生)と一緒に歩かんとあかんな、と痛感。天気が良くて、最高。阪急芦屋川をスタートして、ロックガーデンを過ぎて、雨ケ峠を経てお多福山の稜線に出ると、一面ササっ原のとても気持ちのいい道になります。こういう道が好きだなぁ。ごろごろ岳を経て、たかお先生の家に降りる道では、最後の最後になって道に迷ってしまいました。ホリウチも来たら良かったのに!

今回観てきたのは「クリクリのいた夏」という99年のフランス映画。会場はテアトル梅田。平日の最終回とあって30名程度のちょうどいいくらいの入りでした。
物質的や金銭的に裕福であるのが、本当に「幸せ」なのかを考えさせられる映画です。自然に囲まれる沼地に住み、生活していくのに困らない程度の収入を得ているガリスと、社会的に成功し街に大邸宅を構え、沼地から出ていった老人ペペが対照的に描かれています。きっと、日本でもこんな時代があったんだろうなと思わせます。ガリスは石炭の配達を手伝ったり、野原で摘んだスズランやカタツムリ(エスカルゴ)を街で売ったりして、気ままな生活。だけど、沼に面したテラスでとる食事にはいつも友達がいて、おしゃべりがあります。あたり前だけど、フランスパンがあって、ワインもあります。(当然、ワインが飲みたくなるし、フランスパンをガブッとかじりたくなります)。
一方、街に住むペペは、娘夫婦と孫と一緒にテーブルを囲み、メイドさんに給仕してもらっていますが、会話にはトゲがあり、楽しい食卓ではないよう。ペペは何かと窮屈な街の暮らしを抜け出して、独りで、あるいは孫と一緒に沼地へ出掛けてガリスとその仲間たちと楽しい時間を過ごす。
この映画で不思議な存在はアメデという街に住む中年の裕福なオッサン。このオヤジ、いつもめかし込んで沼地に現れては、ガリスたちと楽しんでいるだけど、なんかバカにされてるというか、なんというか。でも、憎めないキャラクターで、街での仕事をガリスに紹介したりしている。本当は自由な沼地での暮らしに憧れているんだけど、便利な街での暮らしも捨てきれないってとこでしょうね。ガリスと沼地の隣人リトン、ペペ、アメデを通じて、私たちに「こんな幸せな暮らしがあった時代があったんだよ」と教えてくれる映画です。 ペペ老人が、沼地でカエルをどんどん釣り上げるシーンは圧巻です。

この映画は上映が終わってしまったようです。チャンスがあればご覧下さい。 さぁ、今夜は早く帰って、チーズとフランスパンでワインを空けようかな!

おしまい。