「太陽は、ぼくの瞳」

モハムドは「風をつかまえる」


  

今回は「太陽は、ぼくの瞳」という、ちょっぴり悲しい映画を観てきました。会場はアメリカ村のビッグステップにあるパラダイスシネマ。今回は入口から奥にある方だったのですが、こちらだと断然、最後列が観やすいですね。約30名の入りで淋しい。冷房が良く効いていて寒かった。

「運動靴と赤い金魚」のマジッド・マジディ監督の最新作。だからイランの作品ですね。前作とは少し趣が違いますが、今回も子供が主人公。「運動靴...」では、純真なアリ少年がテヘラン中を走って、走って爽やかな感動を与えてくれましたが、「太陽は...」のモハムド君はまだ8才なのに、生まれつき目が見えない少年。

目の見えない闇の世界とは、どんな世界なんだろう。久しぶりに合う妹の顔を手でなぞって「大きくなったね」とモハムドは言う。麦や牧草に触れ、その感触を確かめて覚えていく。バスの窓から手のひらを突き出して「風をつかまえてるんだ」と父親に自慢する。

故郷から遠く離れたテヘランにある、全寮制の盲学校に通うモハムドは夏休みを迎える。終業式の朝、友人たちの元には次々に迎えの親がやってくるのに、いつまでたってもモハムドの父親は来てくれない。悲しいけど、淋しいけど、それは態度に出さない。こらえているんだけど、待ちわびた父親の声を聞いたときに、思わずほろりと涙がこぼれてしまう、「もう、迎えにきてくれないのかと思った」。

モハムドの母親と5年前に死別している父親は、再婚相手にと思っている女性に熱を上げている。彼は、何故かこの再婚にはモハムドが邪魔になると考えてしまう。そんな空気を敏感に察したモハムドは久々の帰郷も、何か心が晴れ晴れしない。心から慕っている祖母には髪留めのピンを、妹にはビンの王冠で作った首飾りと絵はがきを、姉には櫛と絵はがきを、それぞれ大事そうに取り出しておみやげとして手渡す。この3人がモハムドを見る目のなんと優しいことか。彼の帰宅を心から喜んでる。姉妹と一緒に地元の学校へ行ってみたモハムドは、彼の利発さを発揮して先生をも巻き込んで教室中の人気者だ。そんな彼の姿を誇らしげに見守る妹の笑顔がまた素晴らしい。故郷の自然の中で、いろんなものに触っては微笑んでいるモハムドの笑顔は素敵です。

日本ですら、全盲の方が一人で生きていくのは難しい。ましてや、イランの大自然のまっただ中にあるこの村でモハムドが生きていくのは想像以上に過酷なものがあるだろう。映画の中で、彼の父親が「ひどい人」のように描かれている部分もあるけれど、彼の判断は間違っていなかったのではないかと、心斎橋からの帰り道に考え込んでしまう私でした。

この「太陽は、ぼくの瞳」は、パラダイスシネマでもうしばらく(6/23までの予定)公開中です。この映画は、子供の優しい心に触れたい方向きですね。モハムドの姉と妹がむちゃくちゃかわいいですよ。
次回は「風雲〜ストームライダーズ」(テアトル梅田)、その次は「あの子を探して」(ガーデンシネマ、予告編が良く出来てます)へ行く予定です。

おしまい。