「變臉(へんめん)」

クーワーの一途な眼差しに、涙腺がゆるくなる


  

遅れていたサクラもようやくほころび、気がつけば満開間近。もう春ですね。週末には待ちに待った「桜花賞」です。

さて、「ジェルソミーナ」映画サークルの準会員(?!)である方が、近々ご結婚されるのではないかというウワサを耳にしました。「フィアンセはスイミングクラブのインストラクターをしているらしい」に始まり「若いのに結婚は早すぎるのではないか」とか「お祝いにはゴルフグッズが喜ばれるのではないか」はては「『彼女がドラエモンが好きなので、祝電はドラエモン電報でお願いしたい』というリクエストを受けた」などなど、祝賀ムード一杯ですね。おめでとうございます。

今回は「中国映画の全貌2000」というシネ・ヌーヴォーの企画上映会へ行って来ました。前から観たかった「變臉(へんめん)」という1995年の香港中国合作の作品ですな。つい一月か二月前にNHK教育の「アジア映画」の枠で放映されたので観た方もいらっしゃるかもしれませんね(私はビデオの録画を失敗しました、残念)。会場はもちろんシネ・ヌーヴォー。お客さんは25名と、この会場としては多い方ですね。

時代は1930年代後半から40年代前半。四川省は揚子江沿いにある街を舞台にした年老いた大道芸人の物語。彼は「変面王」と呼ばれ、様々な仮面を早変わりでかぶりかえる芸で身を立てているのね(この芸はなかなかスゴイ)。どうやら嫁も息子も病で無くしたらしく、今は揚子江に浮かぶ船の上で「将軍」と名付けたサルと淋しく暮らす日々。唯一の楽しみはなじみの酒屋でオヤジを相手にお茶や酒をすすること。目下の悩みはこの芸を伝承する者がいないことだ。
街の人身売買斡旋所へ出掛けていった変面王は「おじいちゃん!」とまっすぐ彼を見つめる8才のクーワーを気に入り、この子を自分の跡継ぎにしようと買い取る。この時代の中国って人身売買を屁とも思わぬ風潮があるし、強烈な男尊女卑の習慣があるのね。
クーワーを気に入り、何かと世話を焼く変面王。街で出合った京劇のスタアにも自分の孫だとついつい自慢してしまう。彼が「孫の手」で背中を掻こうとするとクーワーが手を火で暖めてから、シャツの中に手を入れて背中を掻く。この時の幸せそうな変面王の顔を見ていると「家族っていいな」と微笑んでしまいます。でも、幸せは長く続かない。ひょんなことからクーワーが女の子だと発覚してしまうのだ。
落胆する変面王。泣いて「何でもするから、売らないで、ここに置いて!もう7回も売られたの!」と懇願するクーワー(彼女が女の子だと分かってから字幕も女言葉になるところが芸が細かい)。

クーワーを演じる少女がスゴイ。人身売買斡旋所での射るような鋭い眼差しから、変面王に芸を仕込まれそれを次々にこなしていくしなやかさ、老板(ラオパン)のために掃除し賄いをするけなげさ。そして捕らわれた変面王のために命までを投げ出そうとする一途さ。どれをとってもこの映画は彼女抜きには語れません。
ラストでは思わず涙腺がゆるくなってしまった私ですが、すがすがしい感動に包まれて、吉野屋の牛丼(只今100円引き)を美味しく食べました。残念ながら「變臉」の上映は終わりました(チャンスがあれば是非ご覧下さい)。

次回は同じくシネ・ヌヴォーで中国映画「太陽の子」を予定しています。

おしまい。