「風が吹くまま」

田舎と携帯電話のミスマッチが暗示的


  

3月の声を待っていたかのように、今日は一気に春めいてきました。大阪城もどうにか無事に終わり、チャッピーならずともほっと一息ですね。これから「三寒四温」を繰り返しながら「春」になっていくのでしょうか。競馬の「チューリップ賞」や「弥生賞」を今週に控えているのにいつまでも寒いわけがないと思っていたところです(レース名が季節に染み込んでいます)。このところ山歩きは寒さに負けて行っていません。とうとう2月はどこへも行かず、炬燵のお守りをしていました、あかんなぁ。

さて、今回は「風が吹くまま」(原題は"The Wind Will Carry Us")。会場は梅田Loft地下にあるテアトル梅田の小さい方。もう片一方では「シュリ」をやっていて超満員。結構な行列でした。で、「風が吹くまま」も定員70名の劇場に20名程度の立ち見が出る大盛況。それは、今日3月1日が「映画の日」で1,000円均一のサービスをする日だったからですね。

監督はアッバス・キアロスタミ。イランとフランスの合作作品。「運動靴と赤い金魚」以来、イランなど中央アジアの映画を観るようになりました。今回も「運動靴...」のアリ少年のような純真なかわいい子供がちゃんと出てきます。よく知らなかったんですが、このキアロスタミ監督というのはずいぶん有名な方みたいです。予告編が良くできていて、ついふらふらと見に来たのですがまずまずの出来。
なんといっても良かったのが、主人公のベーサード・ドーラニーがモリアキ総務部長にとっても似ていることでしょう。モリアキももう15年か20年くらいたったらこんな風になるんかなぁ、と思わせる風貌をしています(もし、傷ついたらごめんなさい)。

テヘランから700キロも離れた山岳地帯にある寒村が舞台なのね。ここの自然がなんとも言えず素晴らしい。荒涼とした山々に黄金色に実った麦畑。ぽつんぽつんと立っている木の緑。そして、白いレンガと漆喰でかためられ迷路のように入り組んだ通路をもつ集落。ストーリーを追いかけるより、まるでドキュメンタリー番組を見ているような気さえしてきます。そして、モリアキ以外は(実はモリアキも含めてなんだけど)プロの役者ではなく、地元の人たち。この村の人たちが実に「いい味」出しているんやなぁ。ほんまに。思わずこのクルドの「シアダレ村」へ行きたくなります。モリアキみたいに3週間ぐらいこの村でチャイを飲みながら何するでもなくぶらぶらしていたいな。
滑稽なのが、モリアキへ時折テヘランからかかってくる携帯電話。電波の状態が悪く、電話が鳴る度にモリアキはクルマに乗って5分くらいの丘の上へ電話をしに行くのね。ゆったり自然のままに流れていくこの村の暮らしと携帯電話という組み合わせのミスマッチがなにか暗示的でもあります。
途中、ちょっと眠たくもなりますが、ドキュメンタリーが好きか、イランが好きだったり、この監督がお好きな方は観て下さい。せりふがあって、画面に顔も出てくる登場人物がとても少ないのも特長だし、音楽もほとんど流れて来ず、自然の音がありのままにそこにあるって感じです。

3/17(金)まで公開中。なお、この「風が吹くまま」の撮影風景を題材にしたドキュメンタリー「キアロスミタの1週間」という作品もモーニング&レート・ショーで公開中です(これは観てません)。

今回の予告編はアタリ。見たい映画がどんどん公開されそうです。
次回は同じくテアトル梅田でレイト・ショー公開の中国・香港合作の「一瞬の夢」かな。
それでは、また。

おしまい。